「生わさび」の危機

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 うどんの杵屋、そばのそじ坊などを展開する外食企業のグルメ杵屋。コロナ禍による収益減少と原材料価格による採算悪化を受けて、22年3月期は3期連続の連結営業赤字を見込む。

 コロナ禍からの営業再開後も夜は客足がまだ鈍く、原材料高が追い打ちをかける。直近2年、経済封鎖や外出制限の影響によって世界中で食材加工や冷凍工場の稼働が落ち込んだ。需給バランスが崩れ、様々な食材が値上がりしている。レストラン事業子会社の西嶋栄人経営企画部兼商品開発部長は、「今起きていることが1年~1年半後の原材料価格に響く。ロシアによるウクライナ侵攻の影響がそば粉や小麦価格に反映されるのはむしろこれからだ」と危惧する。

 「利益確保のためあらゆる手を尽くす」。西嶋部長は目下、30以上あるブランドの強化策や生産性向上など、営業赤字を食い止める打開策を各ブランド長と模索している。

 象徴するのが「わさび問題」だ。そじ坊では、そばに生わさびが1本付く自慢のサービスがある。「オープン当初から貫いてきたサービス。だが、おろしわさびに変更すれば原材料コストは削れる」。廃止か継続か。頭が痛い、とそばのブランド長は語る。

 3月末、東京・用賀の店舗である実験を始めた。だしの品質を上げ、国産そば粉を一部使い、さらにそば粉の割合を8割に増やした。そばの香りが引き立つようにした分、価格帯も引き上げた。「値上げを最小幅に、スピーディーにあらゆる対策をして粗利を確保する」。西嶋部長は「絶望物価」に闘いを挑む。

次回に続く)

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