小さな実験を続けていくためのコツ

 実験フェーズの最後に行うのが、まさに「実験」です。本質的な課題を撃ち抜くような斬新な打ち手を思いついたとして、それをいきなり決裁会議で起案すると、「リスクがあるんじゃないか?」「うまくいかないんじゃないか?」「うまくいくと思う根拠は何だ?」と決裁者から問われてしまうでしょう。

 そこで、すぐには起案せずに、先に課題を解決できることを証明するために、小さく実験をします。「リスクがあるんじゃないか?」と議論している暇があったら、リスクを小さくして実験してみて、実際には大した問題は起きないと証明するのが、リーン・マネジメントの考え方です。

 実験で大事なのは、メンバー1人ひとりに複数の案件を回してもらうということです。仮に1つしか案件を持っていなかった場合、「その実験がうまくいかなかったら仕事がなくなる」という恐怖心が生じてしまい、実験をダラダラと続けたり、うまくいかなかった事実を素直に報告できなくなったりする可能性があるからです。

 ですから、メンバーの心理的安全性を守るためにも、各人に3つぐらいの実験を持ってもらうのがいいと思っています。そうすれば、1つぐらいうまくいかなくても正直に実験結果を振り返ってくれます。「うまくいかない」ということがわかっただけでも、事業にとってはプラスなのです。

パワポ禁止。「紙」が「神」になるから

 一神教マネジメントのやり方では、本当に必要かどうかもわからない機能まで全部要件定義に盛り込んで起案しますが、リーン・マネジメントでは、実験で証明できた部分だけ、どうやって今の業務フローの中に組み込むかを起案すればいいわけです。つまり、実験で見えた事実や、それによって描ける近い未来だけを描きます。

 そのため、「パワーポイントで戦略を固めたりしないように」とメンバーには言い続けます。パワーポイントを作り始めると、「紙が神になってしまう」からです(笑)。実際、私のグループ内ではパワーポイントの使用は禁止でした。手書きかテキストメモでいいよと。

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