他業界の当たり前を取り入れてみる

 こうしたリサーチをする場合、よく同業界の中だけで比較してしまいがちですが、ここでは他業種の中で当たり前にやっている業務フローやシステムの活用などと比較する目線が重要です。

 例えば、アナログな業界が他のアナログな競合をベンチマークしても何の発見もありません。自社の業界とは別に「最近、一気にIT化が進んだ業界」などに着目するといいでしょう。同じ領域の中だけで伸びシロを探していても、本当の意味での伸びシロを見つけることはできません。

 不動産業界を例に出すと、以前は不動産屋さんに行かなければ物件情報を見せてもらえなかったのに、今はネットで先に物件を見てから来訪するという流れが当たり前になっています。「なぜ不動産業界で当たり前のことが人材業界では当たり前ではないのか?」ということに気づくことができます。

 TikTokもヒントをくれます。TikTokは、ユーチューブのように「動画を検索して一覧画面から選んで見る」という方式ではなく、「立ち上げたら勝手に動画再生が始まり、上にスワイプすることで次の動画が出る」という斬新な表示方法を採用しています。まずはユーザーにコンテンツを見せて、そのコンテンツの視聴時間やリアクションを見て、その人がどんなコンテンツに興味があるかを学習していき、最適なコンテンツを表示していくロジックになっています。

 私がリクルートエージェントで行った施策も、このTikTok的なユーザーインターフェースからヒントを得ています。「なぜ人材業界ではこの方法は当たり前ではないのか?」「実際の求人を見て初めて、好きか嫌いかがわかることもあるのではないか?」。そういう仮説から、打ち手を考えたわけです。

 「他業界の当たり前」を自社サービスにも取り入れてみるというのは、そういうことです。

既に考え尽くしたところを探しても…

 そして実験フェーズの最後は、「今、自社が一番大事にしているものを否定してみる」というやり方です。これは一番パワフルで個人的にはお勧めです。

 大企業の場合は、自社の巨大なサービスを運営するために、「自社の何が強みで、何を大事にするか」という方針がしっかりと社内に浸透しています。皆さんの会社にも「当社はここを大事にしている」ということがきっとあるでしょう。

 逆説的に考えると、今行われているすべての施策は、自社が大事にしたいと思っていることを中心にして、それを強化するような形で行われているはずです。つまり、大事にしていることは「不可侵の聖域」で、それ以外で何ができるかを必死に考えていくという暗黙のルールがあるのです。

 しかし、実際の伸びシロはどこにあるのかというと、自社が大事にしていることとトレードオフの関係になっているために諦めていることの中に存在する可能性が高いと思っています。つまり、自社が大事にしていることを守ることによって犠牲になっていることの中に大きな伸びシロがある可能性が高いのに、そこを探るのではなく、既に考え尽くされているところばかり気にしている。だから伸びシロが見つかりにくいのです。

 まずは自社が大事にしているものを一度否定してみて、そのせいで捨てている顧客価値があると仮定してから考えてみることが、伸びシロ探しにおける必殺技です。

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