「数字への過信」が判断をゆがませる
坂井豊貴氏(以下、坂井氏):前回お話しした「レーティング」とも関連しますが、人間は「数字を無条件に信頼する」傾向が強いと思います。前回話題にしたレーティングでいうと、「何点」という数字は気にするけれど、その数字の算出の仕方にはあまり注意を払いません。
今井誠氏(以下、今井氏):数字の算出の仕方がおかしくても、その数字が真実を表しているかのように思ってしまうわけですね。
坂井氏:例えば、ある種の顧客満足度を表すNPS(Net Promoters Score)というレーティングがあります。NPSを組み入れたソフトウエアを売りたい方々が、いろんな企業に薦めています。しかしNPSは、データの集約の仕方があまりに単純すぎて、業績との連動が乏しいことが多くの研究で示されています。
今井氏:結局NPSは、11段階評価のデータを「推薦者」「批判者」「それ以外」に大ざっぱに分けるんですよね。そして「推薦者」が30%で、「批判者」が20%だったら、その差の10をNPSとする。「それ以外」についてはノーカウント。
坂井氏:そう、いわば11次元の情報を、3次元に落としちゃうわけです。もったいない。そうやって情報をものすごく単純化する。だからNPSは明瞭なんですよ。信じたくなる気持ちは分かる(笑)。でも視界が明瞭だからといって、価値あるものが見えているかは別の話です。
今井氏:経済学をきちんと身に付けると、指標そのものへの見方が鋭くなります。「この指標が、見たいものを表してくれているのか」と、問う習慣が身に付く。それは私たちが経済学のビジネス実装に携わる中で、ぜひ推進したいことです。私たちの取り組みの一部は『そのビジネス課題、最新の経済学で「すでに解決」しています。』にまとめられています。
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