まずは「ざっくりとした知識」で十分

 このようにお伝えすると、「経済のサイエンスとエンジニアリングをいまから勉強する、の……?」と思って、ゲンナリされた方もいるかもしれません。

 ですが、ご安心ください。足りなければ、すでに経済学のサイエンスとエンジニアリングを身につけている仲間を加えればいいのです。「経済学の父」とも呼ばれるアダム・スミスが説いた「分業の利益」を思い出してください。1人で、あるいは自社で全部行う必要はありませんし、それは多くの場合、むしろ非効率でしょう。「サイエンス」と「エンジニアリング」の両面から経済学をビジネスに役立てる、そのために経済学者がいるのです。

 手前味噌に聞こえるかもしれませんが、経済学者を事業チームに引き入れるのは、現状を変える有効な手段です。役に立つ武器をもっている専門家を仲間にして、自分たちで使っていくわけですね。

 その際には、経済学だけでなく、経済学者をうまく使うことが大切です。例えば、『そのビジネス課題、最新の経済学で「すでに解決」しています。』の共著者のうち、唯一のビジネスパーソンで、わたしを含む多くの経済学者を使ってきた今井さんは、経済学者とビジネスパーソンとで、「先生と生徒」の関係にならないことが重要だと強調していました。つい経済学者を「先生」のようなポジションに置いてしまいがちですが、そうすると「生徒」側はビジネスの事情や性質を「先生」に教えにくくなってしまうといいます。

 ビジネスパーソンに求められるのは、経済学や経済学者が、個別のビジネス課題に対して、どのような形で役に立つのか、そのざっくりとしたイメージをつかむこと。それができていれば、ニーズが生じたときに、適切な経済学者を見つける「仲間さがし」もきっとうまくいくはずです。

 経済学がビジネスにとってどんな武器となり得るのか、経済学者がビジネスにどんな価値を提供できるのか、という少し具体的な提案は、これからのこの連載で、お伝えしたいと思います。

学知はこれからのビジネスのアドバンテージ(写真:Who is Danny/Shutterstock.com)
学知はこれからのビジネスのアドバンテージ(写真:Who is Danny/Shutterstock.com)

日経BOOKプラス 2022年4月25日付の記事を転載]

「経済学のビジネス実装」第一人者の経済学者&実務家が贈る
「現場で使える」ビジネス教養


「経済学は、ビジネスとは別もので、役には立たない」と思い込んでいませんか?
実は、最新の経済学は、マーケティング、データ分析、財務管理などの限られた分野だけでなく、商品開発や企画立案、販売戦略、ESG(環境・社会・企業統治)対策、さらには、日ごろの会議、SNSの新しい活用などあらゆるビジネス現場で活用できる段階に達しています。

経済学がどのように役に立つのか?
実際にどう使えばいいのか?

気鋭の経済学者5人[安田洋祐氏(1章)、坂井豊貴氏(2・6章)、山口真一氏(3章)、星野崇宏氏(4章)、上野雄史氏(5章)]と、ビジネスにすでに経済学を実装している実務家[今井誠氏(終章)]が語る、「ビジネス×経済学」の決定版です。
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この記事はシリーズ「ビジネス×経済学の新しい可能性」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。