この10年で株価を4倍超に伸ばした伊藤忠商事。ただ、資源高で利益を積み増す三菱商事や三井物産にどう対抗するのか、シナジーが見えない持分法適用会社のCITIC(中国中信集団)の減損リスクをどう抑えるのか、といった課題も抱える。鉢村剛CFO(最高財務責任者)に、投資・財務戦略について聞いた。

■連載予定 ※内容は予告なく変更する場合があります
(1)伊藤忠の下克上、負け癖払拭した岡藤流「逆張り×統率」
(2)伊藤忠、知られざる「デジタル群戦略」 ライバルはアクセンチュア
(3)「コツコツ型」伊藤忠、資源依存の三菱・三井 財務で見る商社3強
(4)伊藤忠、日立建機出資の舞台裏 なるか「総合」の再定義
(5)伊藤忠・岡藤会長の危機感「問題は慢心。大木も芯から腐る」
(6)「5年で辞めるつもりで、オオカミになれ」 伊藤忠社員へのエール
(7)伊藤忠・鉢村CFOが語る投資戦略  失敗から得た4つの教訓とは(今回)

鉢村剛[はちむら・つよし]
鉢村剛[はちむら・つよし]
1991年、伊藤忠商事入社。金属・エネルギー経営企画部長などを経て、2011年4月に財務部長。15年4月にCFO。21年4月から、代表取締役副社長執行役員(写真:陶山勉)

この10年の株価上昇率は、他社を圧倒しました。

鉢村剛CFO(以下、鉢村氏):伊藤忠の独自性は安定的な成長です。時価総額が3兆、4兆、5兆円と上がる間、最終利益が3000億、4000億、5000億円と段階的に上がり、(基礎的な収益力は)6000億円のステージに向かってステップを踏んでいます。成長のボラティリティーが低い点が、評価されていると考えています。

 株主還元への意識も強くなっています。数年前までは株主資本が2兆円ほどで、4兆~5兆円の三菱商事や三井物産の半分しかなかった。財務体質を強化しなければ株式市場の信頼感は高まらないとして、先輩たちは配当をしたくてもあまりできなかったからです。

ここ数年、新しい分野への投資よりも、ファミリーマートやほけんの窓口、ヤナセなど既存投資先への出資を積み増すケースが目立ちます。

鉢村氏:過去、いくつか失敗を経験しました。1970年代の東亜石油、90年代のバブル期の不動産や特金・ファントラ(当時流行した金融商品)、2000年代にメキシコ湾の油田開発、2010年代にはシェールガスといったところです。間違った方向に大型投資をして、ちょっと状況が良くなったらまた失敗して悪くなるということを続けていました。

 商社の世間の評価は、「リスクアペタイト(投資意欲)が強すぎて、大型投資で失敗する」「資源価格が落ちるとだめになる」というトーンでした。三菱さん、三井さんだったら資源投資の知見がありますが、伊藤忠はそういうレベルじゃない。(資源の)プレミアムリーグに入ってない中で、色々投資をやろうとするとリスクも大きいわけですよ。

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