ソフトバンクとの違いは「商流」

 ビジネスのDXにも上下流がある。課題を浮き彫りにするコンサルティング、解決のヒントを探すデータ分析、ITシステム構築、検証後に運用を担うBPO(業務の外部委託)という流れだ。トータルで引き受ければ実入りも大きいが、それだけライバルも多い。実際、数年前から情報・金融カンパニーの中核子会社、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が受注で劣勢になるケースが増えた。

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 強力なライバルの一社が米アクセンチュアだ。外資系コンサルティング会社の中でもIT系に強く、M&Aなどを通じてDX領域を急速に広げている。ほかにもNTTデータや富士通、ITベンチャーも競合相手となる。

 岡藤会長の危機感を高めたのが、2017年の米アマゾン・ドット・コムによる高級スーパー、米ホールフーズの買収だ。巨大テック企業が本格的にリアルに進出すれば、産業構造が大きく変わる。商社の利益の源泉であるバリューチェーンが、デジタル企業に侵食されかねない。

 DXの方策を立案し、実現するには、伊藤忠が持つ武器の多機能化が不可欠。情報・金融カンパニーの新宮達史プレジデントは、「数年かけて、企業群がようやくそろった」と語る。アクセンチュアのコンサル領域には及ばないと認めつつも、「このまま負けるとは全く思っていない」と語る。

 勝算はどこにあるのか。まず、成功体験をつくる「現場」を持っていることだ。コンサルは収入源として手数料を確保する必要があるが、DXでは効果が見えるまで時間がかかる。先行費用に耐えつつ、現場とデジタル担当が粘り強く試行錯誤を続ける必要があるため、実証段階で挫折しがちだ。

 そこで伊藤忠は、各カンパニーやグループ各社のDXについて、先行投資を本社が負担する仕組みを導入。一つの例が天然ゴム事業だ。数億円と約2年の歳月をかけて、ゴム農家の産地情報を加工メーカー、タイヤメーカーまで追跡できるブロックチェーンシステムを構築。環境破壊や人権侵害がないことを保証し、販売単価を引き上げる試みだ。

 食品卸子会社日本アクセスと取り組むファミリーマート向けのサプライチェーン最適化では、2年半をかけて在庫の30%削減といった効果を生み出している。軌道に乗った今なら、「同じことを素早く低コストで実装できる」(担当者)。こうした事例は300件超蓄積され、外販に踏み出す時機が来た。その先行例がフーデータというわけだ。

 DXの力となる企業群は、出資比率が数%にとどまる企業も含む。「出資させてくれないか」と交渉しても、渋る企業が少なくないからだ。

 企業群は各分野で専門的な力を持つ「トップ企業」で独立心が強い。とはいえ個々で戦っても、アクセンチュアのような巨人には勝てない。伊藤忠にとっても、顧客の要望に寄り添うはずの企業群が自らの子会社ばかりでは、押しつけになりかねない。

 関川潔情報産業ビジネス部長は「Best of Breed(最適な製品群によるシステム構築)を伊藤忠グループとして提案するための最適な間合いを目指す」と話す。他人だと機動的に顧客対応ができないが、親子だから最良とは限らない。

 「群戦略」を掲げる企業といえば、ソフトバンクグループ(SBG)がある。「情報革命」を起こすため、世界中の有力企業に出資し、シナジーを生もうとしている。

 過半出資にこだわらない点は共通するが、伊藤忠の堀内真人情報・通信部門長代行は、「SBGが投資先の成長を志向した戦略としたら、伊藤忠はDXを望む顧客のための戦略だ」と語る。投資会社となったSBGと異なり、商流を持つ伊藤忠は顧客と直接向き合うため、マーケットインの色合いが濃い。

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