前回「質の高い挑戦を量産し、再現性高く実行するための「組織と人材」とは」は先進的企業としてふさわしい組織への変革を進めていく4つのステップについて書きました。

(1)組織・人材に対する考え方や軸、根底にある思想や価値観の醸成
(2)新規事業のリーダーに適した人材=イノベーター人材の発掘・支援
(3)イノベーター人材やチームの能力・成果を最大化する育成・支援
(4)健全な多産多死を構造的に実現する組織文化や仕組みの構築・定着

 ステップについて詳細を見ていきましょう。今回はまず(1)の「組織・人材に対する考え方や軸、根底にある思想や価値観の醸成」です。新規事業開発における「リーダー」は、実際に事業構想を練る、アイデアを発想する、事業プランを策定する、チームをつくりマネジメントする、策定したプランをスピーディーに実行するという一連のプロジェクトをけん引できる「イノベーター人材」であることが重要です。

 まず大切なのは、企業としてイノベーター人材の希少性について正しく認識することです。実際に筆者がさまざまな企業の新規事業を支援している中でも、すぐに事業開発のリーダーを任せられるイノベーター人材の出現割合は非常に低く、これまで独自にリサーチや評価を行ってきたデータと経験則を照らし合わせても、平均して企業の従業員の3~5%程度の割合でしか存在しません。

 経験を積むことでリーダーとしての成長を期待できる「イノベーター候補人材」という定義でも5~7%程度の出現率であり、総合しても10%前後しか存在しませんでした。

 また、意外に思われるかもしれませんが、この割合は「新規事業やイノベーションの創出に積極的で実績もある企業」と一般に思われている企業でも、劇的に高いわけではないことが分かっています。

 一方で、どのような会社でも必ず一定の割合でイノベーター人材が存在していることも事実です。「自社にはそんなイノベーター人材はいない」と嘆く経営者や新規事業開発責任者の方も多いのですが、本当にイノベーター人材が存在しない企業は中長期的には必ず競争力を失い、市場からの退場を余儀なくされます。

 一定の売上高や利益を生み出して脈々と事業を継続してきた歴史を持つ企業には、イノベーター人材が必ず存在します。若い人材が比較的多いベンチャー・スタートアップ企業や中堅・中小企業では、経営者や創業メンバーなどが「イノベーター人材」に該当しているケースも多いでしょう。

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