前回の記事「深い洞察で課題を発見し、新規事業開発につなげる方法とは」では、新規事業開発における最初の検証項目に当たる「顧客と課題」について解説しました。今回は鋭い洞察力を発揮して課題を発見するための4つの調査手法について紹介します。

①デスクリサーチ

 机上で完結できる類の調査手法で、実際の調査を自ら行わずに、すでに何らかの目的によって実施された調査結果や文献・論文やデータ・リポートなどをインターネットや書籍・図書館などで収集することを指し、素早く産業の構造や市場の概観、動向やトレンドや業界全体の課題などの大枠を把握するのに適した手法といえます。

 また、近しい業界や類似のビジネスモデルの企業のホームページや展開している製品・サービス、IR(投資家向け広報)や決算情報などを調査することから得られる示唆も多いですし、SNS(交流サイト)のトレンドやユーザーのコメントや口コミ、Googleトレンドやキーワードプランナーなどを活用して、世の中でどのようなワードで、どの程度のボリュームで検索されているかを見ることで、顧客の需要を推し量ることなども有効です。

 ただし、あくまでもすでに表面化している既知の情報を収集する手法になるので、情報の質や希少性という意味では差が作りづらいため、あくまでも広く浅く、スピードを重視して全体観を把握し、深掘りして調査する内容を決めるために活用するものと認識しておくとよいでしょう。

②エキスパートインタビュー

 特定分野や領域、業界などの有識者や専門家に対してインタビューを実施する手法であり、短時間で当該分野の全体観や課題、機会、最新動向や希少性の高い情報や機密性の高い情報などを把握するのに適しており、課題の仮説立案に役立てることができます。仮に検討する新規事業が自分の専門外で情報や知見が不足している場合などは特に有効で、質の高い情報をスピーディーに収集しつつ、客観的な意見やコメントをもらうことができます。

 ただ、有識者や専門家といっても、その得意領域や詳しい分野などは細分化されていることもあり、検討している事業や市場・顧客に関するエキスパートとして適切かというのは慎重に判断しなければなりません。また、実際の事業に関わった経験がなかったり、顧客と直接接点を持っていない、もしくは乏しい方の場合はデスクリサーチで得られるものと大差ない情報しか持ち得なかったりする可能性もありますので、自分にとって適切なエキスパートとの接点を持てるように意識して動きましょう。

 なお、エキスパートとの接点を作る際には、その方やその方が在籍する企業や組織、団体のホームページやブログ・SNSなどから直接連絡するのが最も手っ取り早く、お金もかからないのでおすすめです。事業への想いや、検討している背景や経緯、なぜその方にインタビューしたいのか、何を聞きたいのかなどを明記した上で丁寧に連絡をすれば、思いのほか真摯に対応いただけるものです。

 また、自社がそれなりの規模の企業であれば、恐らく社内にもさまざまな分野のエキスパート、もしくはエキスパートとつながっている社員が在籍している可能性も高いので、社内のネットワークをフル活用していくやり方も有効ですし、自身のSNSなどを活用して紹介や協力者を募るやり方もあります。

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