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 参考までに、筆者の印象に残った、日本企業が発信するビジョンで良い例を2つ紹介します。

 1つ目はソフトバンクグループの「ソフトバンク新30年ビジョン」です。これは創業30年の節目を迎えた2010年の定時株主総会後に発表されたもので、圧倒的に超長期の時間軸で過去から未来への世の中の変化に対する分析や洞察を経て、情報革命で人々を幸せにするための300年成長を実現する一里塚として、次の30年のビジョンを提示しています。

 前述の共感を得られるよいビジョンの条件を十二分に満たし、135ページに及ぶ大作のスライドと併せて発信された内容は、当時大きな話題になりました。同グループのその後の成長は、読者の皆様もご存じの通りです。

 もう1つは、東証プライム市場に上場するバイオベンチャー企業、ユーグレナです。創業から約15年間、ミドリムシを主軸にした事業を複数展開し、順調に成長してきましたが、パートナー企業の増加と事業領域の成長により複雑性が増し、新たな方針が必要なフェーズとなったため、これまでの理念やビジョンやスローガンを廃止し、「フィロソフィー=ありたい姿」として一本化して再定義したそうです。

 サステナビリティー(持続可能性)をキーワードに、創業時の思いを大切にしつつも、未来志向で環境や社会の変化を捉え、人と地球に持続可能な健康を実現するための社会問題解決に向けたストーリーが具体的に描かれており、強い共感を生む内容になっています。

 またビジョンを策定する過程においては、未来に向けた社会・経済のトレンドを押さえておくことも重要です。今ならSDGsやESG投資・脱炭素などがそれにあたるでしょう。

 SDGsは「持続可能な開発目標」のことで、01年に策定されたMDGs(ミレニアム開発目標)の後継として15年9月の国連サミットで採択された、「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標」です。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。途上国のみならず、先進国自身も取り組むべき普遍的なものであり、世界各国で注目を集めています。

 ESG投資は、従来の財務情報だけでなく、環境・社会・企業統治要素も考慮した投資のことで、特に、年金基金など大きな資産を超長期で運用する機関投資家を中心に、企業経営のサステナビリティーを評価するという概念が普及し、気候変動などを念頭に置いた長期的なリスクマネジメントや、企業の新たな収益創出の機会を評価するベンチマークとして、SDGsと併せて注目されています。

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