普通なら「もうお手上げ」となってしまいそうだが、やはり彼は簡単に折れない男だ。なんとしてでも生き残ってやると新しい事業に乗り出し、21年3月からYOLO BASEで「ドライブインお化け屋敷」を始めた。

 文字だけ見ても、一瞬なんだかよく分からないこのサービスは怖がらせ隊(東京・渋谷)が展開していたサービスで、YOLOは同社と提携してサービスを始めた。休業中のホテルのロビー内に車を配置し、屋内をお化け屋敷用に改装。車の中で3密を回避しながら新しいホラー体験を楽しんでもらえるという場だったが、コロナ禍で仕事を失った外国人に雇用の機会を提供するという目的もあった。

 ドライブインお化け屋敷は多数のメディアに取り上げられ、5カ月で約6000人が体験に訪れた。出前館の元取締役会長である中村利江氏に社外取締役への就任を直訴し、心強い味方を付けたことで、ビジネスの流れも大いに変わったという。

 これまでYOLO JAPANが調達してきた資金総額は13億円。いわば、13億円分のチャレンジをし続けてきたとも言える。そんな彼も、最初こそ「資金調達=借金」というイメージが強く、周りに恐る恐る「失敗しても、一生かけて返すので出資してください」と声を掛けていた。しかし、ある起業家に「その言葉は弱気の表れだろ? みんな加地くんに期待して投資するんだよ。だから『返します』なんて言わずに、しっかり自信を持ってプレゼンすればいい」と言われ、目覚めた。

 投資家と起業家はイーブンであり、投資家たちは「どこに投資をすれば、社会がどう良くなっていくのか」という目線で投資先を判断する。それなら、自分がつくりたい理想の社会をしっかりと伝えて、思いを託してもらうべきではないだろうかという考えに変わった。そして、毎回「これだ」と思うものに全力でベットしていくのが彼の生き様なのだ。

 コロナ禍で、かなり厳しい時期もあったはずだ。けれど、彼はそんな素振りを全く見せない。「『大変そうやけど大丈夫?』と聞かれることが嫌い」という彼は、いつも気丈であり、どんな逆境の中においても「大丈夫」な状況に導いていく。むしろ、同業者が事業撤退をしていく中でも我慢してフィールドに立ち続けていたら、一人勝ちできるという気概でいるほどだ。

 決して不安や恐怖を感じないわけではないが、その過程さえも“冒険活劇”のように捉えているからだ。そう捉えられるのは、きっと死を近くで感じたことがあるからなのだろう。彼が奇抜なファッションをしているのも、「事故で顔に付いてしまった大きな傷を目立たせないため」だと後から聞いて驚いたものだ。

 コロナ第7波襲来の兆しが現れだした時期に彼と話した際に、強気で前向きな発言が飛び出した。

 「考えたことは全部行動に移します。ときどきヒットが出ると、しびれるくらいうれしくて、これが起業家の醍醐味なんだと感じます」「後で『やっておけばよかった』と後悔したくないので、命がけで事業をやっています」

 YOLOは今、日本に滞在する外国人向けのライフサポートメディアをメイン事業としている。6言語で外国人求職者を募集でき、過去15日間に登録された外国人の基本情報や日本語スキルといったデータベースを見ながら直接メッセージを送ることができる「スカウト機能」を実装するサービス「YOLO WORK」において、働きたい外国人と、求人企業を結び付け、求人掲載料で稼ぐモデルだ。 

 YOLOは22年4月、「子ども食堂」ならぬ「外国人食堂」サービスを始めた。日本で孤立を深める外国人を対象に、YOLO BASEにおいて無料で食事を提供する。食事はスポンサーによる寄付とYOLO JAPANの持ち出しだが、外国人の居場所をつくり、さまざまな出会いを創出することが社会変革を起こし、自社の成長につながると考えている。

 自信たっぷりに事業の成長を語る彼は、関西随一の“逆境に強い”有言実行な起業家である。それでいて、彼の原動力はいつもシンプルで、“目の前の人のために”という思いに突き動かされている。「世界中から優秀な外国人を集めて、ダイバーシティーな日本を誕生させる」という彼の夢が叶う過程を、これからも見守りたい。

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