無事に目覚めた時、「もしあのまま死んでいたら、ただの英会話スクールのおっさんで終わっていたのか」「このまま終わるのは絶対嫌や。坂本龍馬や西郷隆盛のような歴史を変える変革者になりたいし、親として子どもに何かを残してあげたい」という思いがあふれてきた。自身の半生を書籍化しようと出版社に持ちかけるも、当初は色よい返事をもらえなかった。自ら何か行動を起こそうと考え、自身の考え方などをまとめてブログに掲載し、フェイスブックに投稿した。彼の哲学を記す連載「成功する人の考え方」は話題を呼び、フェイスブックページは現在フォロワーが約13万人に上る。その実績が認められたのか、本を出版することもできた。

 こうして、英会話スクールをピボッド(路線変更)し、16年にサービスを開始したのが「YOLO JAPAN」だ。後に社名にもなるYOLO JAPANの由来は「You Only Live Once=人生は1度切り」から。死に直面して実感した、彼の思いが反映されたものだ。展開しているのは、在日外国人向けに求人や不動産の紹介、携帯電話の契約代行や病院の問診表の書き方まで、日本での生活全般をサポートする会員サービスである。ただの求人紹介メディアではなく、多方面から日本で暮らす外国人の支えになる“外国人ライフサポートメディア”であることがこだわりだ。

 会員数は右肩上がりで、現在は世界238の国や地域の約22万人の外国人が登録をしている。サービスの認知度を上げるための広告・宣伝に費用は掛けていない。会員登録があった際に、安心感を与えようとその人の母国語で連絡を入れる細やかな気遣いを貫いた結果、口コミで広がっていった。

 YOLO JAPANは提供するサービスを増やしながらも新たな事業に投資を続け、現状維持ではなく常に挑戦を続けている。インバウンド(訪日外国人)需要が最高潮だった19年9月には、南海電鉄と連携して新今宮駅の近くに外国人向け就労インバウンドトレーニング施設「YOLO BASE」を開業。ホテルやレストラン、コワーキングスペースが複合する施設であり、そこで外国人に雇用機会を提供し、起業を志す外国人が集まる場をつくりたいという思いからの挑戦だった。

 華々しいセレモニーも開催し、「さあこれから」という時期。タイミング悪く、今度は新型コロナウイルス感染拡大という逆風が彼を襲う。YOLO BASEにいた多くの外国人は母国に帰り、日本に渡ってくる外国人もゼロに。彼の手元には莫大な固定費の支払いだけが残った。