帰国後まもなく、偶然にもヤフーから「シナジーマーケティングを買い戻さないか」とオファーをいただいた。タイミングも良く、条件的にも合致したため、シナジーマーケティングを買い戻すことにした。だが、僕は会長職に就き、経営は代表取締役社長に任せている。
では、何をしているのか。「ビジネスマンとしての後半戦は、やりたいと思うことを全部やろう」と心に決め、様々な新規事業を立ち上げ続けている。現時点で、シナジーマーケティング以外に事業会社を7社立ち上げた。
プリンシパル・インベストメント(自己資金による投資)や事業開発を担うビジネスプロデュースグループとして立ち上げたのがペイフォワードで、スタートアップや志を持った起業家を支援している。僕自身、若い頃からたくさんの先輩経営者の方々に様々なことを教えていただいたし、応援もしていただいた。先輩方への一番の恩返しは何だろうと考えると、彼らの考え方や思いを次世代の起業家に伝えていくことだと思った。「ペイフォワード」という会社名の由来だ。
ライフワークとしても、7~8年ほど前からスタートアップ支援を行っていて、大阪府のベンチャー企業成長プロジェクト「Booming!」やスタートアップ発展プロジェクト「RISING!」において、成長企業支援政策の立案やプロジェクトの運営を担っている。大阪のスタートアップシーンを盛り上げていきたいと考えている。
以前からスタートアップを支援してきた自分からするとなんとも感慨深いのだが、最近は関西でもスタートアップ熱が高まっている。大阪、神戸、京都で産官学民が一体となって、国の「スタートアップ・エコシステムグローバル拠点都市」に選定されたこともあり、スタートアップ支援の取り組みが以前にも増して活発になっている。こうした流れは今後、関西の経済を担うような会社たちを多数生み出していくんじゃないかと、今からワクワクしている。
個性的で面白い関西のスタートアップ
スタートアップというと、どうしても東京こそ中心地という印象があるかもしれない。しかし、大阪にも面白いスタートアップがたくさんある。ただ、東京と少し毛色が違う。大阪らしい点がいくつかあるのだ。
まず1つめに、稼ぐ力があることだ。東京のスタートアップシーンでは、創業当初は赤字で、ベンチャーキャピタルから資金を調達し、一気に事業を伸ばしていくモデルが主流かと思う。一方、大阪のスタートアップは創業当初から稼ぎ、自分たちでキャッシュを積み上げる力にたけている。自己資金だけで、10億~100億規模の会社をつくり上げていくような起業家もたくさんいるのだ。これは、大阪が歴史的に商売文化の街であることに関連しているのかもしれない。「ビジネス」よりも、「商売」という言葉を用いる方がしっくりくる気がする。
2つめに、世の中のトレンドを捉えて事業を行うのではなく、自身のこだわりが事業の出発点となっているスタートアップが多いという特徴がある。事業立ち上げの理由を問うと、「この問題を解決したい」といった強い思いや、起業家自身の原体験や家庭環境がバックグラウンドにある場合が非常に多いのだ。東京はIT系のスタートアップが大半を占めているが、大阪では様々な業界でまんべんなく、面白い起業家やスタートアップが誕生している。
そして、3つめの特徴としては、とにかく変なヤツが多いことだ。関西人の変わり者っぷりは全国でもよく知られているかと思うが、起業家も大言壮語を吐いたり、顔が強面(こわもて)だったりと、なかなかの個性派ぞろいである。東京の起業家のようにシュッとはしていない。
こうしたベースがありつつも、最近では東京に倣ったエクイティ戦略やグロース戦略を取り入れることによって、急激に事業を伸ばすスタートアップも増えてきている。魅力的で、たくさんの方に知っていただきたいスタートアップが関西にはたくさん存在している。本連載では次回以降、大阪を中心に関西の面白い起業家を紹介していきたい。
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