なぜ中国はゼロコロナに固執するのか
2021年夏、北京在住の友人は、政府がゼロコロナ政策を続ける背景をこう語った。
「2020年の夏ごろ、中国はほぼコロナを抑え込んでいましたが、それは政府の強いリーダーシップのおかげで、社会の体制に優位性がある、とメディアで宣伝していました。一方、同時期に『感染者数が増加する欧米は無策である』という、欧米批判の報道も増えていったように感じます」
しかし、2021年の夏になると、中国でもデルタ株の感染者が増えていく。
「これまで中国は政治体制のおかげでコロナを抑え込めていたのだ、と宣伝してきたために、もし感染が広がれば、政府に批判の矛先が向いてしまう。だから、絶対に『ゼロコロナ』でなければならない。引くに引けない状況なのだと思います。国民も政府がゼロコロナといったらゼロコロナ。いや応なく、従わざるを得ない」
武漢で抑え込んだ成功体験もあり、もはやウィズコロナへの転換はできない。コロナとの「共存」を認めることは、中国の政治体制の否定や政策の失敗を認めることにつながるからだ。今秋の共産党大会での習体制3期目の突入に花を添えるためにも、ゼロコロナは不可避なのだ。
厳しすぎるゼロコロナ政策について、2021年夏に取材した時点では、かなり高い割合で「賛成」「どちらかといえば賛成」という意見が多く聞かれた。あくまでも印象だが、当時は7~8割の人がゼロコロナに賛成、2~3割が反対といった感じだった。
賛成意見には次のような声があった。
「中国はコロナに打ち勝ちました。人口が14億人もいるのに、ここまで徹底できる我が国は本当にすばらしいと誇りに思います。感染者が出たら、移動制限など不自由を強いられますが、やむを得ない。人命よりも大事なものはありません。政府への忖度(そんたく)でこういっているのではありません。自分は何よりもコロナが怖いのです」
「私はとにかく死にたくない。PCR検査にも慣れたので、しばらくPCR検査をする機会がなかったら、逆に心配になります」
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