フィンランド現存最古の施設でサウニストの指導を受ける

 次に向かったのは、サウナ首都を標榜する中南部の都市タンペレ。薄曇りの中、冷たい粉雪が舞っており、筆者の不安を表しているようだった。

 サウナ取材の調整をしてくれた方が、さっそく現地のサウニスト、レムケさんを紹介してくれる。ひげを蓄え、いかにもサウナ玄人といういでたちで、今度こそ本当に0度近い水の中に突き落とされてしまうかもしれない、と不安が募る。

 一緒に向かったのは、フィンランドで現存最古のサウナ「ラヤポルッティ・サウナ」だ。いかにも老舗という造りで、壁と同化した石造りの巨大ストーブが中央にそびえたち、女性と男性のサウナルームを分けている。

フィンランドで現存最古のサウナ「ラヤポルッティ・サウナ」。壁と同化した巨大ストーブがある
フィンランドで現存最古のサウナ「ラヤポルッティ・サウナ」。壁と同化した巨大ストーブがある

 レムケさんが手取り足取り、サウナの流儀を教えてくれる。設備の使い方から体の清め方まで。石に水をかけて発生させる蒸気「ロウリュ」の循環の仕方、体にはどのような効能があるか、新型コロナウイルスに感染するリスクはあるかなど、サウナルームに入ってもサウナ談議は尽きない。

 しばらくしてレムケさんが外に出ようと促す。「ここからカキーンと冷たい水をかぶるのか」と身構えていると、彼は違った。バケツに冷水を入れ、かがみながら慎重に足に冷水をかけていき、「冷水を浴びるときは気をつけて」と注意を促してきた。筆者も同じように足だけに冷水をかけてみた。

「ラヤポルッティ・サウナ」で外気浴を楽しむ人たち。右がレムケさん
「ラヤポルッティ・サウナ」で外気浴を楽しむ人たち。右がレムケさん

 一緒に屋外のベンチに座り、外気浴を楽しむ。レムケさんはそれで十分という風情で「ととのう」感覚を求めていないようだった。その後、3回ほどこのサイクルを繰り返した。小さなサウナルームは10人ほどが集まると肩を寄せ合うほど密集状態になる。フィンランドの他の地域から来た客がヴィヒタ(シラカバの枝葉)を持参し、それでお互いをたたき始める。

 レムケさんが筆者にサウナの科学を語り続けるので、地元民も面白がってレムケさんを「教授!」と呼び質問する。レムケさんは熱いロウリュを浴びるのが好みであり、サウナルームで最も熱気が集まる場所に座りたがったが、一度も上半身から冷水をかぶらなかった。気づくと筆者もリラックスし、地元民に交じって、サウナ談義に加わっていた。

アヴァントをする人が絶えないサウナ

 少しフィンランドのサウナに慣れたところで、タンペレの名物サウナの見学に向かう。氷結した湖に穴を開け、その冷水に火照った体を沈められる。これを「アヴァント」と呼ぶらしい。

氷結した湖に穴を開け、サウナ上がりの人たちが冷水につかれるようにしている
氷結した湖に穴を開け、サウナ上がりの人たちが冷水につかれるようにしている

 筆者が防寒着を着込んで現地に行くと、湖に入っていく人が見える。しばらく湖の氷の上からその様子を眺めていると、サウナから出てきた人たちが次々と冷水に入っていく。上の動画をご覧いただくと分かるように、氷と雪に囲まれた冷水の中に入っていくのは見ているだけで冷たかったが、利用者たちは気持ちよさそうだ。

 この時に印象的な出来事があった。このサウナの様子を湖の上から撮影していると、何やら大声で呼びかけてくる女性がいた。撮影について注意するかと思いきや、氷を割って冷水に落ちることを心配してくれていたのだ。筆者がその注意に気がつくと、その女性は安堵したような笑顔を浮かべた。

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