本場フィンランドでは、人々はどのようにサウナを利用しているのか。どのように「ととのう」感覚を追求しているのか。フィンランドのサウナ事情を追った。

フィンランド中南部の都市タンペレにある湖に面したサウナ。氷結した湖に穴を開け、火照った体を冷水に沈められる
フィンランド中南部の都市タンペレにある湖に面したサウナ。氷結した湖に穴を開け、火照った体を冷水に沈められる

 サウナ発祥の地は正確には分かっていない。サウナの広義である熱気浴は先史時代から世界各地にあるという。ただ、フィンランドでは戦後、電気サウナストーブが普及し、日常生活に浸透。人口およそ550万人の国に約300万のサウナがあるといわれ、自他共に認めるサウナ大国だ。

 2020年にはフィンランドのサウナ文化が国連教育科学文化機関(ユネスコ)から無形文化遺産に登録された。日本のようなブームではなく生活に根付いているフィンランドのサウナはどのようなものなのか。サウナ特集の一環として英ロンドン駐在の筆者が、フィンランドのサウナ事情を追った。

 はじめに白状すると、サウナはほぼ素人。お風呂で十分に満足してしまい、これまでサウナは少したしなむ程度だった。特に水風呂には苦手意識がある。サウニストたちが追求する「ととのう」という深いリラックスの感覚を実体験したことはなかった。

 ただ、本場フィンランドに近いロンドン駐在という理由から、サウナ特集のメンバーに加入。途中まで他の取材との兼ね合いで躊躇(ちゅうちょ)していたが、特集班の熱量に押されるようにしてフィンランドに飛んだ。

若者たちの熱気に圧倒される

 初めに訪れたのは、首都ヘルシンキのサウナ「ロウリュ」だ。16年にオープンした近代的な建築のサウナで、ヘルシンキ中心部からのアクセスも良く、顧客層はカップルや若いグループが多い。バルト海に面しており、サウナで温まった体を海水で冷やす人々でにぎわう。サウナ室には多くの若者が集い、入室できない場面もあった。

首都ヘルシンキのサウナ「ロウリュ」。写真左手の階段が海につながっており、海水で体を冷やすことができる
首都ヘルシンキのサウナ「ロウリュ」。写真左手の階段が海につながっており、海水で体を冷やすことができる

 1人でサウナに入り大勢の若者たちの熱気に圧倒されていると、日本人の学生たちに出会った。あまり慣れていないかと思いきや、サウナ愛好家の男子学生がおり、地元の若者たちに続いて勢いよく海に入っていく。サウナ初体験という女子学生も海水に入っていく。

 外気温はマイナス。海は凍っていないものの、極めて冷たいことは分かる。おそらく0度近いだろう。筆者は何度か海に向かったが、凍っている床に触れた足が痛いくらいだ。若い男子学生が「思い切りですよ!」と明るく激励してくれる。学生たちが室内に入った後、試しにそっと海水に足をつけてみたが、冷た過ぎて縮み上がった。

 学生たちに海に入らなかったことを伝えると、笑顔で「思い切りですよー。僕が後ろから押しますよ!」と実力行使を申し出てくれた。学生たちにあおられて格好がつかないので何度かトライしようと思ったものの、あの冷たさが脳裏をよぎる。「うーん、今日のところはやめておこうかな」と告げると、学生はややがっかりしたような表情を浮かべた。今後のサウナ取材に不安を覚えながら夜のロウリュを後にした。

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