「ロウリュの状態を可視化して、熱のこもり方まで分からなければお客さんに満足してもらえない」という井上氏。「安全に健康になってもらうことが第一」(井上氏)というように、顔の表情や汗のかき方から察知して「無理しないで」と声をかけることもしばしば。

 ち密な計算に裏付けられた技能とパフォーマンス、そして慈愛に満ちた接客。日本流の独創的なアウフグースを求めて足しげく通うファンは多い。今では同店以外の都内の施設からもお呼びがかかる。

 実は今でこそ「熱波師」という業界用語は定着しているが、名付け親は林店長。その第一号は井上氏だ。本場ドイツのサウナ協会から日本人で初めて体系的なアウフグースのプログラムを受けた熱波師として認定された一人でもある。

テレビ付きサウナや多様な水風呂は日本だけ

 サウナ施設の仕事は時には「3K」と呼ばれるほど地味だ。マットの交換や清掃など客に気持ちよく施設を使ってもらう仕事とはいえ、なかなか脚光を浴びることがない。だが、日本のサウナにアウフグースが定着し、清掃員兼熱波師になる人は増えている。

 「気持ちよく熱の波動を感じる」「アクロバティックなパフォーマンスは見ているだけで楽しい」「熱波師なしで爽快な汗はかけない」。近年、客から絶賛される一流熱波師も現れており、今では全国の熱波師が腕を競い合う「熱波甲子園」も開かれている。

ぎょうざ湯ではサウナ上がりに胃袋もととのえられる
ぎょうざ湯ではサウナ上がりに胃袋もととのえられる

 異彩を放つ個性派サウナではほかにも、ギョーザ屋が店舗の奥にサウナ施設を構える「ぎょうざ湯」(京都市)がある。本格的なロウリュができ、外気浴スペースではドリンクの注文も。サウナ上がりにジューシーなギョーザと生ビールで飲食でも「ととのえられる」とあって、常に1カ月先までほぼ予約で埋まるほどだ。

 フィンランドなど北欧・東欧のサウナを「ジャパナイゼーション」することで、独自の生態系(エコシステム)を育んできた日本。例えばテレビ付きサウナは日本では珍しくないが、これは欧州でも類を見ない。フィンランドではサウナ後は外気浴が定番だが、水風呂が独自に進化したのも日本ならでは。温度が違う2種類の水風呂や、脳天に水が落ちてくる仕掛けなども独特だ。日本のサウナ進化論は本場フィンランドのサウナ関係者も注目している。

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