業界は企業の新規参入に沸いており、サウナ施設のコンサルティングや設計を手掛けるアクトパス(東京・中央)はこの2年、「開業の相談が引きも切らない。売り上げの7割は新規案件」(望月義尚社長)という。事業管理や市場調査のノウハウ、法律知識などを伝授する全6回の開業セミナーを告知したところ、説明会には100人が殺到。予定数をはるかに上回り、受講者の募集も途中で打ち切ったほどの盛況ぶりだ。

 サウナの後に食べる食事「サ飯」や全国のサウナを渡り歩く「サ旅」など若者が火を付けたサウナ経済圏は各方面に拡大。新たな消費文化として注目を浴びている。一方で関係者の間では、「実態とかけ離れ、トレンドが独り歩きしている面もある。市場を冷静に見つめるべきだ」(日本サウナ総研の立花玲二プロデューサー)と過熱感を戒める声も上がる。

欧州のサウナプログラムを独自にエンタメ化

 第3次ブームが本物かどうかの答えはまだ完全には「ととのっていない」が、これまでとは違うサービスに彩られ、特色あるサウナが人気を集めているのは確かだ。

 その1つがドイツ発祥の「アウフグース」を日本流にローカライズし、エンターテインメントにまで昇華させたおふろの国(横浜市)。アウフグースとは蒸気熱を巧みにサウナ室にかくはんさせる技能プログラムを指し、それをつかさどる職人を日本では「熱波師」と呼ぶ。その日本を代表する熱波師がおふろの国の井上勝正氏だ。

 井上氏は身長170㎝、体重86㎏の元プロレスラー。現役時代、目を悪くして出場機会が減った時、ファンだった林和俊店長に「うちで働かないか」と声をかけられた。

井上氏は独自のパフォーマンスでファンを獲得(写真=村瀬健一)
井上氏は独自のパフォーマンスでファンを獲得(写真=村瀬健一)

 当初は風呂掃除などを任されていたが、マイクパフォーマンスなど井上氏の芸達者ぶりに注目していた林氏が「熱をかくはんさせる仕事をやってみないか」と提案。井上氏は2つ返事で引き受けた。ドイツ流のアウフグースを学んだ井上氏は林店長と、サウナ客にもっと喜んでもらえるエンタメとして、健康科学に基づく独自のアウフグースを考案した。

 「ネーネー」と井上氏が呼びかけると「パーパー」と客が応える。サウナ室がスタジアムのように一体となった後、熱波を送る前の井上氏の口上が始まる。体に負担をかけすぎない温浴の仕方に始まり、アニメやスポーツなどちまたの話題を講談師のように披露する。

 そして、プロレスで鍛え上げた体から空気の流れを読んだ熱波が繰り出される。108回タオルを仰いで熱波を送る「除夜の熱波」を行うほか、皆で歌を合唱することもある。

 パフォーマンスだけではない。井上氏はその都度、サウナ室内に目を走らせ、客数や年齢層を把握する。状況によって温度や蒸気の流れは変化するため、それに応じてかくはんの仕方を変える。かくはんの必要がなければ何も動作を起こさないこともざらだ。

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