ストーブ上のサウナストーンに水をかけて蒸気を発生させる「ロウリュ」ができるサウナ室は、国産ヒバ材を贅沢(ぜいたく)に使用。中庭が目の前にある開放的な水風呂に使うのは、水道水ではなく、まろやかに澄んだ地下水。中庭に設けられた外気浴スペースでは、サウナ愛好家である「サウナー」らが安らぎの表情を浮かべる。

サウナを起点に世代を超えたつながり

 最近は水晶から作られた楽器「クリスタルボウル」を使った瞑想(めいそう)サウナのサービスも不定期に始めた。透明感のある残響が特徴のクリスタルボウルにはヒーリング効果もあり、薄暗い空間で無心になれるサウナとの相性が良い。朋子さんは楽器を習得するため教室にも通ったほどだ。

 「こだわったのは個性。何かが印象に残る銭湯サウナに作り変えたかった」。朋子さんが言うように、黄金湯には建築の意匠性以外にもオリジナリティーが光る。クラフトビールなどを提供するサーバーが並んだバーカウンターはその一つ。銭湯上がりにつぎたての一杯に喉を鳴らす客は多い。

銭湯上がりのクラフトビールでさらに「ととのう」?(写真:Yurika Kono)
銭湯上がりのクラフトビールでさらに「ととのう」?(写真:Yurika Kono)

 DJブースもある。不定期にDJがターンテーブルの前でレコードをかけて客を楽しませる。普段かかっているレコードも70年代のポップスから演歌、ダンスナンバーと雑多。どんな世代でも受け入れてもらえるよう選曲にも余念がない。

 「レコードって何か味わいがありますね」「この曲いいでしょ?」。いつからか年配の利用客が、若いころ買い集めたレコードを持ち寄るようになり、そのレトロ文化を知らない若い世代との間で会話も生まれるようになった。黄金湯ではレコード市も開かれるようになり、世代を超えたコミュニティーになっている。

黄金湯は意匠性が目を引く(写真2点:Yurika Kono)
黄金湯は意匠性が目を引く(写真2点:Yurika Kono)

 新型コロナウイルス禍で社会のリアルな関係性が絶たれ孤独を感じる人は少なくない。だが、「銭湯サウナを通して新たなつながりが生まれている。安らぎや心の充足感など私たちが思っていた以上に人々をひきつけてやまない価値が眠っていることが分かってきた」(朋子さん)。利用客の8割ほどはサウナ目的だが、「若い人たちに下町銭湯の魅力も感じてもらえるようになっており、サウナが廃れかけていた公衆浴場文化を再生するきっかけになれば」と期待を込める。

都市部の若者の利用衰えず

 かつては「おじさん」たちのたまり場だったサウナ。だが、ここにきて黄金湯に代表されるサウナの新星が続々と登場し、一味も二味も違う付加価値の高いサービスを提供している。

 連載1回目で紹介した通り、今、日本に訪れているサウナブームは3度目だ。ブームの主役は若年層で、女性の存在も大きい。メディアが果たした役割も大きく、サウナ通いの人たちの生態を見つめた漫画「マンガ サ道〜マンガで読むサウナ道〜」(講談社=モーニングKC=)は人気を博し、テレビドラマにまでなった。

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