客層が一気に若返る

 「セルフロウリュができるのがいいんですよね」。こう話すのは古戦場から車で1時間ほどの宮城県名取市に住む24歳の男性会社員。この日は、仙台市に住む同い年の友人と一緒に古戦場を訪れた。古戦場では20~30代の客はもちろん「これまではゲームセンターに集まっていたような中学生の集団が、サウナへ入りに来ることも」(浅野社長)。かつての古戦場は60~70代の地元住民が客層の中心にいたが、今では客の平均の年齢層は40代となり、駐車場の光景を見てもわかる通り県内外から客が押し寄せている。

古戦場の熱波師から技術を学びたいと教えを請う利用者も少なくない
古戦場の熱波師から技術を学びたいと教えを請う利用者も少なくない

 ここで少し日本におけるサウナの歴史を振り返ろう。日本に訪れているサウナブームは今回が3回目とされる。最初の波は1960年代で、欧州式のサウナが上陸し、それを取り入れた船橋ヘルスセンターは年間450万人もの客が訪れた。第2次ブームは2000年代前半。郊外型のスーパー銭湯が増え、サウナが併設されるようになった。

 サウナは「おじさんのたまり場」――。そんな先入観を持つ読者も多いだろうが、古戦場の客層の変化を見てもわかる通り、現在の第3次ブームをけん引しているのは若年層だ。日本サウナ総研によると、19年に月15回以上サウナを訪れる20代の男性は16年と比べ、約2.2倍に増加。21年のサウナ人口は1573万人と20年から1000万人減ったが「都市部の若年ヘビーユーザーに限って言えば底堅く、需要の下支えになっている」とサウナ総研の立花玲二プロデューサーは話す。

 女性の利用も広がった。サウナ総研によると、月に4回以上通うヘビーユーザーの女性比率は16年の35.3%から20年は41.7%に上がった。サウナは男性専用施設が多いが、女性たちの熱気を受け、かるまる池袋(東京・豊島)などレディースデーを設ける人気施設も増えている。

 日本サウナ・スパ協会によると、サウナに関する正しい知識を身につけるための認定資格「サウナ・スパ健康アドバイザー」の養成講座の受講者数は、21年度は約1万2000人で、5年前の393人から急増している。「ほとんどは20~30代の若者」(若林幹夫事務局長)という。

 「『サウナイキタイ』でこんな施設があるんだ、と知ったんです」。先ほどの名取市に住む20代男性は古戦場の存在を知ったきっかけをこう明かす。サウナイキタイとは17年12月に開設された、日本最大のSNS(交流サイト)型サウナ検索サイト。サウナや水風呂の温度、混雑具合などを施設ごとに一覧できる。ユーザーが情報を書き込んでおり、サウナ文化の発信源となっている。月間の利用者数は90万人を超える。

 「SNS上で社長に話しかけても、気さくに答えてくれる。その雰囲気の温かさも魅力かな」。こう話すのは毎週古戦場に通うという50代の男性。横浜市の自宅に家族を残し、福島市に単身赴任する彼にとって、古戦場は貴重な癒やしの場だ。浅野社長はサウナストーブの改造が完了した20年11月ごろから、サウナイキタイや自身のツイッターなどでの情報発信に力を入れてきた。

 サウナイキタイ上のユーザーからのレビュー数は20年11月まではわずか200件ほどにすぎなかったが、今では約1700件まで増加。浅野社長がストーブの改造や外気浴スペースの設置といった様々なしかけを情報発信し、消費者がそれを拡散、集客力が高まっていくという好循環が生まれていった。ストーブの改造完了後、すぐに客数が増え始めたのもネットを活用した告知に理由があったのだ。

 SNS文化との相性の良さも発揮し、物欲のない若年層を夢中にさせるサウナ。その熱気を販促などに生かす企業も出てきた。その1社が大塚製薬だ。

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