石油・ガス輸出が途絶する4つの想定ケース

 今後ロシアからの石油・ガス輸出が途絶するシナリオとして、次の4つシナリオが想定しうる。まず第1に、現在検討されている国際的な資金決済網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からロシアの銀行を排除する経済制裁の結果、ロシア産の原油や天然ガスなどが取引できなくなるというケースだ。

 米国務省は「制裁はエネルギー市場を標的にしない」と発表している。だが、ロシアの貿易輸出額および政府歳入の半分近くが石油・ガスであり、供給を止めずに心理的効果で価格だけ上昇すれば、むしろロシア政府の歳入を増やしてしまい逆効果にもなりかねない。そう考えると、より実効的な制裁を求めエネルギー市場も対象にするということは今後あり得るだろう。

 第2に、自発的な輸入自粛による効果である。テクニカルに取引が遮断されていなくても、国際世論に協調する形で自発的にロシアからの輸入を止める国が出てくるだろう。既に、カナダ政府はロシア産原油の輸入禁止を発表している(ただし、カナダは産油国であり、もともとほとんどロシア産原油を輸入していないうえ、石油製品輸入は禁止の対象としていない)。

 第3に、ロシア政府が経済制裁への対抗措置として、特定国に対して輸出を停止するというものである。これは、輸出収入を自ら失う行為でもあるが、戦局の段階によってはあり得るだろう。そして、最後の第4は、戦闘行為が激化し、パイプラインなど物理的インフラが破壊されるなどして、供給に支障が発生するというケースである。

 しかし、ロシア側の意志である第3、第4のケースは別として、制裁を行う側が自主的にロシア産の石油・ガスを買わないなどということが、どこまで可能なのだろうか。

 ロシアの世界のおける原油生産量と天然ガス生産量のシェアは、それぞれ12.1%(世界第3位)、16.6%(世界第2位)と大きいが、例えばともに第1位の米国はほぼ自給自足している。むしろ重要なのは生産量よりも輸出市場に占めるシェアだろう。

 そこで、主要産油・産ガス国(エリア)における純輸出量のシェアを計算してみたところ、石油輸出市場に占めるシェアは20%、天然ガス輸出市場に占めるシェアは40%と、さらにインパクトが大きいことが理解できる(図2)。

石油輸出量はロシアとサウジが2トップ
石油輸出量はロシアとサウジが2トップ
図2●石油(原油+石油製品)の純輸出量のシェア(出所:2021年「BP統計」より著者作成)
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ロシアの天然ガス輸出量は世界最大
ロシアの天然ガス輸出量は世界最大
図3●天然ガスの純輸出量のシェア(出所:2021年「BP統計」より著者作成)
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