『日経ビジネス』は経営者を中心に優れたリーダーの決断や哲学、生き方に迫る多数の記事を掲載してきた。その中から編集部おすすめの記事をセレクトして復刻する。第12回は国連難民高等弁務官や国際協力機構(JICA)理事長として活躍し、2019年に世を去った緒方貞子氏に迫った記事を取り上げる。

(注)記事中の役職、略歴は掲載当時のものです。

2003年11月24日号より

難民援助の第一人者が、また新たな重要任務を引き受けた。日本の国際貢献の強化へ、発展途上国への政府支援機関を率いる。平和をもたらす卓越した実行力を、世界の人々が待っている。

カルザイ・アフガニスタン大統領と握手する 緒方貞子氏(2003年7月、カブールで)(写真:共同通信)
カルザイ・アフガニスタン大統領と握手する 緒方貞子氏(2003年7月、カブールで)(写真:共同通信)
PROFILE

緒方 貞子[おがた・さだこ]氏
1927年9月東京都生まれ、76歳。聖心女子大学卒業後、米ジョージタウン大学で修士課程修了、米カリフォルニア大学で博士号を取得。76年、国際連合日本政府代表部公使、78年に特命全権公使に就任。その後、上智大学教授を経て91年から10年間、国連難民高等弁務官として難民援助に従事。2001年からニューヨーク市のフォード財団で論文執筆活動に当たる。日本政府アフガニスタン支援首相特別代表にも就任。10月1日、国際協力機構(JICA)理事長に就いた。

 この秋、2年間のニューヨーク市での生活を終えた緒方貞子は東京に戻り、新しい国際援助の仕事に就いた。 10月1日に国際協力事業団から独立行政法人に生まれ変わって新たなスタートを切った国際協力機構(JICA=ジャイカ、本部東京)の理事長に就任したのだ。発展途上国への技術協力や人材派遣を手がける組織の長として、1300人の職員を率いる。

 ニューヨーク市では学術研究員として、難民援助のあり方についての論文をまとめる一方で、アフガニスタン支援の首相特別代表として国際連合や各国の政府関係者と協力し、復興に力を尽くした。

 「難民援助を含めて開発途上国のために日本がする仕事を手伝いたい」と、帰国直前のニューヨークでJICAでの抱負を語った緒方は、10月1日の就任日には「現場に権限を委譲したい」と方針を示した。JICA理事長という立場から、日本の国際援助をどう変えていくか。仕事は始まったばかりとはいうものの、周囲の期待は大きい。

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