『日経ビジネス』は経営者を中心に優れたリーダーの決断や哲学、生き方に迫る多数の記事を掲載してきた。その中から編集部おすすめの記事をセレクトして復刻する。第7回は巨大流通グループのイオンを率いる岡田元也氏に迫った2009年の記事を取り上げる。

(注)記事中の役職、略歴は掲載当時のものです。

2009年11月9日号より

父親が事実上創業したジャスコを思わぬ形で受け継いでから、既に10年余りが経った。大型ショッピングセンターの成功で大手スーパーの一角だった企業を巨大流通グループに育てた。しかし、最近の業績は低迷。過去の成功を否定して、小売業の原点に立ち返れるか。

小売りの影響力を高めるため、物流への投資やPBの開発に力を注いできた(写真:辻 牧子)
小売りの影響力を高めるため、物流への投資やPBの開発に力を注いできた(写真:辻 牧子)
PROFILE

岡田 元也[おかだ・もとや]氏
1951年三重県生まれ。75年早稲田大学商学部卒、78年米バブソン大学大学院経営学修士課程修了、79年ジャスコ入社。90年取締役、92年常務、95年専務、97年社長就任。2001年に社名をジャスコからイオンに変更。父親はイオンの岡田卓也名誉会長。3人兄弟の長男で、すぐ下の弟が岡田克也外相。店舗視察の際には1人で鉄道を使うことも。

 口をついたのは自己否定とも取れる一言だった。

 イオン社長の岡田元也は10月上旬に開かれた2009年度の第2四半期決算会見で、業績低迷の一因となっているスーパー事業についてこう断じた。

 「ショッピングセンター(SC)が総合スーパーの改革を遅らせた」

 連結売上高5兆円超。イオンはこの10年で、セブン&アイ・ホールディングスと並ぶ国内最大級の流通業になった。岡田の父である現名誉会長の岡田卓也は呉服店発祥の岡田屋を企業合併などで全国規模のスーパー、ジャスコに成長させた。実質的な創業者である父に比べ、現役経営者ということもあってか岡田の経営手腕が評価されることはそれほど多くない。

 岡田が社長の任に就いたのは1997年のことだ。当時45歳。前年に就任したばかりの旧第一勧業銀行出身の社長が総会屋事件への関与で辞任、岡田が「スクランブル発進」した。一部には世襲批判も起きた。父親の卓也が当時のインタビューで「(社長就任は)早いと思うが、皆が言うもんでしようがない」と答えている通り、必ずしも順風満帆の船出でなかった。

 しかしその後、岡田が、ダイエーやイトーヨーカ堂と比べると「格下」と見られることが多かった旧ジャスコを急成長に導いたのは紛れもない事実だ。その原動力となったのがSCである。田畑などを切り開いて数万m2の商業施設を作り、スーパーのほか、数十から数百の専門店を入れるSCは日本の消費文化を変えた。家族が車で出かけて、時間を使いながら買い物を楽しむスタイルが定着し、それに合わせてイオンは業績を拡大させた。

 イオン(旧ジャスコ)は90年代前半からSCの展開を始めてはいたが、急速に拡大したのは岡田の社長就任後である。米国の大学院に留学経験のある岡田は早くから欧米の流通業に学んできた。イオン関係者は「社長就任後のSCは、それまでに比べて明らかにレベルが上がった」と話す。

 岡田自身にもそうした自負はあったはずだ。にもかかわらず、自ら育ててきたSCが、創業以来の本業である小売業を弱らせたと断言したのである。

次ページ 総合スーパーは終わったのか