主食自給とエネルギー備蓄対策を

 ところで、食料不足は今後どうなりますか。特に小麦や大豆は。

 確かに、全体としましてね、今世紀末に人類が70億になり、それに応じた食糧生産が並行してふえているとはいえない。しかし、それは非常にロングランでとらえた場合はそうだという問題で、むしろ私の感じから言えば、食糧は再生産されるものですから、天候異変のような要因がない限り、そんなにこれは大きな問題にはなっていかない、とみている。

 ただ、ひとつだけ、動物蛋白というやつ。動物蛋白の6割は牛ですから、これは世界的に需給のアンバランスは深まりつつあるという感じをうけますね。

 米など主要食糧の自給率を大幅に上げるべきだとの意見も多いですが。

 僕は本来その意見に賛成です。国民の主食と、野菜や大豆など主食に準ずるものはですな、それはやっぱり国として、単なる経済問題としてではなく、完全自給自足までは行かなくとも、自給率を高めることが必要ですね。

 それともうひとつはエネルギーの備蓄です。これが20日間とか30日間とか40日間とかではなく、もっと国家としてふやす。別に理論的に考えたわけではないですがエネルギーは国の血液ですからね、最低6カ月分の備蓄は必要じゃないですか。

 将来、資源や原料は、国際外交のひとつの手段になりやすい傾向があるだけに、独立国として、主権国家として、やはり主体性を持つには、主食とそれに準ずるものの自給率を上げ、エネルギーの備蓄をふやすことは必要ですね。

エネルギー資源が外交の手段に

 太平洋戦争の開戦の時の瀬島さんの経験から、いまのエネルギー危機をどうとらえていますか。

 1941年当時私は大本営におりました(編集部注:1945年7月まで大本営陸軍参謀兼大本営海軍参謀作戦課作戦班、その後関東軍参謀)。

 あれは7月末でしたね、アメリカが日本の資金を凍結して、それからイギリスその他もそれにならった。それ以後は、日本並びに日本の勢力圏内にある油を食べていくしかない。竹の子生活ですね。これはもう当時の我々には重大なショックでした。

 7月末のそれまではね、日本が求めて戦争をやろうとか、ことにアメリカを相手に開戦するような気持ちは、当時の大本営の中にはなかったです。これはもう、ありませんでした。大勢としては。しかし8月の初めから、少なくとも国の産業を動かし、連合艦隊を動かす油が、ジリ貧ということで、これは戦争になるかもしれん、という感じになってきた。そういうのが、生々しい印象として残っています。

 いまの状況はどうかというと、それは昔と違いましてねぇ、一応世界が話し合いでやれる時代です。しかし、それにしても先程申したように、エネルギー資源は世界の外交的手段になっていきそうな感じです。値段が高いから買わない、というようにはいかない問題ですから。

 だから国としての最小限の備蓄をふやすこと、同時に、エネルギーの産出国に対して外交をもっと積極的に展開すべきだ。日本は産油国直結のルートと、メジャーとの関係をうまくやらないといけない。

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