安定成長時代に需要だけ高度成長

 需要が大変ふえたと言うが、実感としてここ1~2年、我々の消費がそれ以前よりそんなにふえたとは思えない。一体どこでそんなに需要がふえているのでしょう。

 たとえば羊毛ですね。社内の専門家に聞くと、やっぱり需要は相当にふえている。女の子のパンタロン、若い人も三ツ揃えの背広、そんな傾向が需要をふやしているんですね。しかし、僕自身はそれじゃあこの1~2年そんなに物を消費したかと言うと、そんな感じは何もない。シャツを朝晩取り替えてるわけではないし、家でもご馳走を従来の倍も食べてるわけでもない。ピンときませんなあ。本当にピンときません、我々には(笑)。

 だが、日本全体で考えた場合、需要は非常に大きく、高度成長時代のような伸びで伸びている。一方、生産は公害や環境、いろんなことから、高度成長から安定成長へ変わりつつある。従って、高度成長時代の惰性でいっとる需要との間に、どうしてもギャップができる。実際、社内の海外担当者に聞いても、比較的従来から安定成長経済できておる国においては、世界全体が資源、原料のこういう状態になっても、日本ほどそう物が足らんという傾向を生んではいないですな。

 結局、日本で特に物不足がおきているのは、ひとつは日本経済の海外依存度が高い、という本質的な問題と、日本経済が高度成長から安定成長に入っている時代に、需要だけは高度成長という、この二つが根本的な原因だと思います。

構造的原因は簡単には直らない

 今後数年は基調的に物不足が続く、と考えますか。

 私は需要面、供給面の構造的原因は簡単に直らんと思いますね。それ以外の問題、つまり、工場事故の頻発といった一時的原因や、水・電力不足、不況後の生産体制の回復の遅れ、過剰流動性、世界及び日本の景気上昇といった循環的原因によるものは、まあ来年いっぱいくらいの間にある程度落ち着くんじゃないかと思うし、またそうしなければ……。

 企業もそれぞれ努力すると思うんです。こういう状況がまだまだ数年間加速していくのではなく、私の感じでは来年一杯くらいで落ち着く所へ落ち着く。もっと手近に考えれば、来年の春くらいまでに、需給ギャップの開き方は落ち着くと思うんですよ。

 来年中に需給ギャップが一応落ち着くというのは、需要の伸びが落ちて、安定成長の供給側へだんだん近づいていくとみているからですか。

 一方が他方へくっつくか、両方が歩み寄るかの問題だとすると、安定成長の生産がまた高度成長に戻るかと言えば、これは戻らないと思うんです。工場の敷地ひとつ広げるのも大変なことだし、公害や原料不足、人手など大局的にみて、生産は高度成長には戻らない。

 むしろ金融が締まってくる。国民の間に消費が美徳ではなく、節約が美徳だとの意識が浸透して、需要の方が抑制されてくるとみるんですがね。従って、来年いっぱいには、需給ギャップは落ち着くのではないか。そういう意味でも、金融引き締めはやらざるをえないでしょうね。

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