だから僕は「良い品を安く売る」と、いつも同じことを言い続けてきた。バブルの時は「こんな時代になってもまだそんなことを言っているのか」と社内でも言われていたけれど。

 そういう教育の話をすると、「ダイエーは経営改革をのんびりやり過ぎる」などと批判されますが、僕は決して改革にスピード感が欠けているとは思わない。そもそも小売業は地味な努力をこつこつと積み重ねていく業態です。売れ筋をとらえ、無駄やロスを減らしながら、日常的に売り場を作り上げていくというのが仕事です。

 こうしてムダを少しずつでも減らしていけば、利益はすぐに増やせますよ。ダイエーは売り上げが2兆円あるから、1%減らせば200億円、3%で600億円もの利益が捻出できます。今、トヨタ自動車のカンバン方式を導入して効率化を進めていますが、もとはと言えば、カンバン方式というのもスーパーに学んでいるのです。トヨタでカンバン方式を広めた大野耐一さんがアメリカのスーパーが商品の物流をジャスト・イン・タイムでやっているのを見て、自動車でも応用できないかと思ったのが始まりだそうです。もともと小売業はムダを省くことでは先行していたわけですから、従業員の教育をしっかりやることが改革の近道だと思っています。

何でもカット、カットじゃダメ

 今回の再生3カ年計画は、利益を出せるような体質にするための応急措置です。経常利益が50億、100億、200億円と出せるようになって体力が回復したら、業態転換とか新たなリストラを考えていきます。今は店舗を急に減らすと償却費用がかかるし、希望退職者を募るにしても、退職金がかかりますからね。

 ですから、収益体質を回復するまでは(現在の経営陣に)任せないとしょうがない。僕は口を出しません。周りが僕に気を遣って、僕の意を汲んで動いているということもないでしょう。自分が始めた事業だからって、不採算の事業はカットするのが当たり前です。ただし、何でも事業をカット、カットしていくというのでは、除却損が多くなるから対策を考えんとね。

 特にハイパーマートは、21世紀の業態として十分可能性があると思っています。アメリカのウォルマートの隆盛ぶりを見ればわかりますよ。ただ、これまでは店舗が4000坪もあって大き過ぎた。もっと店を小さくして、外資との提携も考えながら立て直していこうと思っています。

 ローソンは上場させて株式を売却しますが、40%くらいは手元に残したいですな。そうして事実上の経営権は残したいと思っている。でも、それ以上手放すことになっても、スーパーを24時間営業にすればいい。そうすれば、価格といい品揃えといい、コンビニより強いのは明らかです。

 eコマース(電子商取引)が日本で定着するかどうかは、はっきり言ってわかりません。ですが、結婚指輪をeコマースで買う人間はいないでしょう。一緒に宝石屋に行って買う楽しみをeコマースでは与えられません。やはり消費というのはエキサイティングな感動がなければならないのです。

 もっと最終的な話をすると、メーカーがこれを売りたいというのではなく、消費者が買いたいと思ったものをネットで提示して、メーカーや小売りがその商品を提供するという形になるかもしれない。そうなれば価格は一番安いところに収斂されて、それがスタンダードになっていく。ネットが価格破壊の起爆剤になるかもしれないと思っている。

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