だからといって、総合スーパーという業態自体が限界に来ているとは思わない。総合スーパーというのは正確に言えば「日本型総合スーパーストア」といって、僕が考え出した業態です。最初は小売業の専門家からも、1店や2店はともかく、チェーン店としては成り立たないと言われていた。それが、ちゃんとこれまで発展してきたということは、目指す理念が正しかったからだと思います。しかも、まだその理念は完結していない。

 つまり、値段がまだ消費者の期待する水準に達していないということです。僕が店を始めた時から言っているように、世界単一マーケットになれば、日本の物価は2分の1になる。今でも日本の物価はだいたいアメリカの倍以上するでしょう。だから、2020年までに物価を半分にするという目標は捨てていません。

 既にそうなっている例がありますよ。例えば酒がそうです。昔は、海外旅行のお土産といえば、免税店で皆が必ず洋酒3本とたばこ1カートンを買っていた。日本で買えば数万円もするような洋酒が半額くらいで買えるわけだから、飛び付いたわけです。でも今では酒の価格がほぼ世界共通になって、誰もありがたがらなくなった。こうしたことをすべての商品で起こしたい。創業以来の信念は捨てていませんよ。

危機感では変われぬ、教育こそ必要

 ダイエーがバブル後の失われた10年の落ち込みに的確な手を打てなかった原因は、一言でいえば、「教育」が足らなかったからです。社内で教育が大切だという認識すら薄かった。今のダイエー社内に危機感が薄いのではないかなどと指摘する声もあるが、危機感で会社は変われないのです。企業や店のあるべき姿を教育によって従業員にしっかりと植え付け、追求していくことだけでしか変われない。

 僕は40年前から「小売業が百貨店のマネをしてグレードの高いものを売りたがったり、銀座に店を持ちたいと思うこと自体が危険だ」と言っていたけれども、なかなか現場にはわかってもらえなかった。バブルのころは高い商品も売れるし、客も品質のいいものを求めているというんですな。そうして百貨店ばかり見てやってきたことがいけなかった。現場がスーパーのあるべき姿を追求するといったようにならないのは、やはり教育が足らないからだと思う。

 ですが、今はユニクロやマツキヨ、しまむらといった、ダイエーが目指すべき原点がそこにあるというのが目に見えるわけだから、やりやすい。無印良品がやっていることにしても、ダイエーは昔から「ビッグ・エー」でノーブランド品を販売し、店舗も150店くらいまで広げてきた。このようにダイエーが先鞭をつけたというものは非常に多いのです。しかし、そうした先進的な試みが強みとして定着しなかったのは、教育不足です。教育は「倦まず、飽きず、照れず」にこつこつとやっていかなければなりません。

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