しかし、中国に対しては間違ってはいけませんよ。私は周恩来元総理と北京で会ったとき、先方は「おまえさん、日本は何年何月何日から何日までに、千何百万人殺したんだ」と、その内訳を全部言ってきた。私もね、びっくりしたけど、「はなはだ遺憾だからこそ、ワシは北京に来たんだ。あなたが東京に来たんじゃない」って言い返したんだ。ところが向こうは「あなた、遺憾だけで済みますか」とくるんですなぁ。これは私も返事に窮したけどね。

 「私は中国から渡ってきた文化の中で“ゴメンナサイ”という言葉は最大の感じを表した言葉と思っているんだが、あなたがそう理解しないなら仕様がない」と、はっきり言いましたよ。すると向こうも「あなたは(戦争の時は)こっちを向いていませんでしたからねぇ」と言う。よく調べてるもんだと思ってね。私は(対中戦ではなく)ウラジオストック攻撃部隊だったから。

 それでも周恩来は、「あなたは日本の総理大臣じゃないか」と突っ込んでくるんだ。そこで私はね、「そこまで言うなら私も言うが、あなたの国も九州を攻めたことがあるんだろう。700年余り昔、兵船4000隻をもって、福建省からわが九州をうかがったじゃないか。時たまたま台風によって、1割の400隻が命からがら逃げ帰った。こっちは上陸に成功したけれども、あなたの方は上陸に成功しなかっただけの話だ」と切り返した(笑い)。そうしたら周恩来は「あなたはよく勉強してきましたね」と感心してたよ。それが日中の首脳会談ですよ。

 私はクレムリンに行った時も、「中国は日本人を全部わが日本に帰した。しかしソ連はこれをシベリアへ連れて行って殺したではないか」と言ったら、ソ連側は「中国は帰したんじゃない。メシを食わせられないから日本へ送ったんだ」と言うんだ。しかし、「同じ口減らしでも何もシベリアまで連れて行って殺すことはない。日本人はそんなことを許すか。3代はたたるぞ」と言ってやった。それで向こうは参ったんだから。これはちゃんと記録に残っているよ。

 だから、まあ中国、ソ連とは全方位外交とは言うけれども、日本は中国に対しては相当な借りがあるということだね。

日米関係と非核三原則
石油を第七艦隊が守ってくれているのだから、日本が何を分担するのか……

 ところで、米国との間で経済問題と防衛問題がからんでくると厄介なことになるんじゃないですか。

 いや、経済と防衛がからんでも厄介なものじゃないよ。大体がからむものなんだ。しかし、日本に片付ける気がないものな。それをこれからどう解決していくのか。とにかく国際分担だね。

 米国に対して、日本はまず保護貿易をやらないようにする。これについては時間をかけて徐々に行きますよ。日米繊維交渉から10年後のいま、自動車交渉が行われた。要するに、日本が門戸を開かないで、向こうにどこまでも自由貿易を守れというのは、なかなか言えないよ。だから、10年すると、「農産物全部の門戸を開け」、「日本の関税障壁を全部撤廃しろ」とくるね。でも、それらは本格的な経済戦争ではなく、身内の中のゴタゴタだね。

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