防衛・外交
米国の要求は政策転換じゃないんです。本腰を入れたんですよ
問 防衛問題に移りますと、米国はわれわれがちょっとヒステリックだと思うくらい強い要求をしているわけですが、ある程度それにこたえていかなければならんということでしょうね。
答 それは当然ですよ。米国は今度は本腰だ。大統領が代わったから政策転換をしたような格好だが、これは政策転換じゃありません。米国の本質的な政策です。彼らに自由主義、民主主義国家の中核だという自負がある。だからNATO(北大西洋条約機構)も守るという。
しかし、NATO諸国はソ連と陸続きだから、実際の空気は日本などと違う。第一、ポーランドひとつひっくり返ったら、西独の経済は2、3年お手上げですからね。それだけに西独も相当厳しい事情にある。いまや欧州は大なり小なり第二次世界大戦の前夜に似た空気ですよ。非常に不景気で、緊張が高い。日本もその辺のニュアンスを理解しなくちゃね。
もっとも、この点について、向こう(米国)の言うのは本当だけれども、日本も急に防衛費を倍にできるかという問題はある。そして、できなかったら米国から日米安保をやめると言い出すかというと、そんなことにはならない。そんなことにはならないけれども、そんな日本人だったら、いずれ報復がきますよ。
問 防衛力を増強する場合、憲法まではともかく、防衛大綱の見直し程度は必要ではないですか。
答 防衛大綱は選挙政策だとか言うけれども、そうじゃないんだ。国の基本政策ですよ。国民の生命と財産を守り得ずして政治があるか。どこへ出しても恥ずかしくない国防計画ぐらいは必要だ。これは当たり前のことじゃないの。
全方位外交というけれど、ソ連と中国への対応はおのずと違う
問 ただ、安全保障という広い意味で、対ソ、対中のバランスをとっていく必要があると思うが……。
答 日本は全方位外交などと言っているけれども、あれはマスコミが作らせたんだ。政治家はそれを言わなくちゃ、選挙に損だという恐怖心があるんだな。しかし、全方位外交っていうのは、実際にはどうかな。日本人でも単なる知り合いと親しい同級生、隣りの子供とわが孫は一緒にしないでしょ。隣りの子にもアメ玉をやるが、自分の孫にゴマする時には二つやる。外交でもそのくらいの自由裁量さえなく、観念的な平和論をやっているんじゃ政治論じゃない。
だから、ソ連とはいまのままで最高ですよ。抑留されて、何も賠償を求めたわけじゃないでしょ。四つの島の返還を求めているだけだもの。そういう意味でソ連に対しては卑下することは全くない。
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