「国土省」「食糧省」などの省庁の統合や国鉄の民営化が必要だ
問 この間、第二臨調の土光会長とお会いになりましたね。
答 答申が出る前に意見を聞かれてね。いろいろ具体的に話しましたよ。例えば、国土省ですね。国土省とは国土をつくるものだ。そこに建設省や林野庁、運輸省の港湾局が入るのは当たり前だ。それから気象庁が入る。そうなると、農林水産省は食糧省になる。国民食糧というのは最大の問題だからね。
本当は建設省がいまの国土庁に入るべきものだが、そうなっていない。もう建設省は事業省としてあまりにも大きくなっていて、政策がない。請負省みたいなものになっちゃった。技術省だよね。国鉄と運輸省監督局の関係みたいなものだよ。
国土庁から見れば、建設省との関係は馬に乗って象の大群を指揮するようなもので、コントロールし切れない。郵政省が電電公社や国際電電を1人の局長ぐらいで指揮できるわけがない。それと同じことなんだよ。そういう意味で、必要な行政機構は倍にして、その代わり10分の1に削ったり、統合できるところはいっぱいある。
経済企画庁だって、大蔵省の経済局にすれば簡単なんだ。企画庁がいらなくなるんだから。その代わり、20人か30人のスタッフを置いて内閣直轄の経済委員会にして、長は官僚と同じ給料を払う。
鉄道については、私は具体案を持っているんだ。鈴木総理のおひざ元の三陸鉄道だけどね。ここを今度、第三セクター(公共部門と民間の共同事業)でやるという。そりゃあ、総理が10万円も出資すれば、みんな出資するでしょう。だが、北海道の鉄道なんかは(この方式では)やれないですよ。
北海道から国鉄をとったらどうなる。熊だらけになってしまう。だって明治4年から北海道の鉄道は赤字だもの。これからだって相当赤字だよ。北海道の人口が1000万人になるまでは赤字だ。民営でできるわけはない。そういう意味で、北海道は北海道鉄道公社を作った方がいい。
四国はね。国鉄を入札にすれば、みんなが買うよ。「四国を買いますかねぇ?」というところに問題があるんだよ。四国は本当ならタダで売ってもいいんだ。だってこれから赤字が出るんだから。赤字の計算をすれば補助金付きで払い下げてやってもいいんだよ。
誰が買うかというと、それは大阪の私鉄、例えば近鉄だとか……。大阪の業者はいっぺんに買う。なぜかというと、これは鉄道だからダメなんで、あのレールの上をSLでも走らせれば学生が乗るし、遅いやつは中をホテルにしてカラオケをやっていれば新婚旅行が乗るしね。
そんなことがわからないで鉄道経営ができるか。(私が関係している)越後交通は、ずい分前から1割配当しているじゃないか。それが国鉄は1兆円の赤字を出す。国鉄の月給なんか絶対高くない。私が越後交通で払っている月給よりも国鉄の月給は安いもの。なぜ越後交通が1割配当して、国鉄が1兆円の赤字を出すか。人間が倍いて、働く時間が半分なんだ。
とにかく私は行革推進論者だ。財政(大蔵大臣)をやった人はそうでなければいかんよ。鈴木君も、政治生命を賭けると言っているが、総理大臣を1年間やっているんだから、政治生命を賭けるのは当たり前だよ。
それからもう一つ言うとね。今度の臨調の答申は多少は革新的なものもあるが、体制内の議論で、みんなワクの中のものだな。だって、大蔵省や各省はこれから15年ぐらいしたら局長になる39年から43年入省組を臨調の専門委員に派遣している。だから、答申は大蔵省だけでなく、行政機構の中で大筋においてコンセンサスが得られている。それで彼らは自信をもって書いたんだ。まあ彼らは各省の中の左派みたいな連中だな。
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