局長や課長を増やし、窓口でパッパと決裁すればいいんですよ

 行政改革は手始めにどこから始めるべきと思いますか。

 行政改革はまず、省とか庁とか委員会、局などの定義から出発しなければならないと思う。たとえば、総理府などは一体、なにを統括するのか。総理大臣と防衛庁長官との間に、総理府総務長官が立っているのかどうか。いま、その辺がわからない。行政を、まず国民にわかるようにしなければだめだ。

 通産省でもそうだ。鉄鋼局、電力局、石炭局、貿易局、というようにすればよくわかる。ところが産業政策局、立地公害局というのがある。こういうものは、外国語に翻訳するとどういうものなのかわからない。外国人には何か陳情する場合、どこへ持っていけばいいのかわからない。自動車の輸出はどこだ、となる。迂遠なようだが、そういうのを直すのが行政改革だ。

 田中さんは行政改革でユニークな構想をお持ちだそうで……。

 最終答申はマスコミが考えている以外のことになるかもしれんよ。全く逆のことが出るかもしれませんよ。たとえばね、それはいまある省を全部変えて、総理大臣と官房長官と総理府総務長官──これは別の名前でもいいが、それだけにしよう。

 官房長官は総理大臣の政務担当で、総務長官は事務担当の副(総理)大臣みたいなものだ。そしてここは省を統括したり、政策委員会を統括する。省とか委員会は実施官庁だ。これを20省だったら20省にビシッとしなければいかん。いま21省だから、まあ総理大臣を除いて20省というところがいいところかな。

 そして、国民にこれを明確に知ってもらう。陳情とか許可を得ようというときどことどこを回らなければだめだ、なんてことを役所に言わせないようにする。どこかの窓口に行って内容証明をぶつけたら、(返事が)ちゃんと1カ月以内に自動的に出てくるようにしなくちゃ。コインを入れれば何でも出てくる世の中なんだから(笑い)。

 ただね、私の改革案は単純な削減じゃないよ。たとえばね、私は、今の局は、最低2倍なくちゃいかんと考えているんだ。3倍でもいいと思う。課長なども3倍でも5倍でもいい。逆に増やすんだ。しかし、公務員の総定員は半分でいい。そこらが大変なところなんだ。

 総定員を減らして、役職員を増やす。国民に理解されますか。

 説明すればわかるはずです。役所っていうのはね、だいたい、窓口が責任回避なんだ。面倒なものは上にあげるんだな。断るんでも、窓口で断るのがいやなものだから(上にあげて)課長が断り、局長が断り、大臣が断る。

 ところが、民間の銀行は逆なんだ。銀行は全部、融資の窓口には課長を座らせる。銀行で課長が、「融資部長のところに行ってください」と言ったときには、もう50%は融資が決まっており、あとはいくら貸すかという判断だよ。だから、銀行は窓口でも管理職が責任を持っている。

 官庁はまるで逆だ。だから局長や課長を増やし、窓口でパッパ、パッパと決裁しろというわけさ。1年おきに課長を代えることは絶対いかんね。少なくとも10年間は置かなければいけない。そうしないと、責任体制の確立ができない。国民が申請を出して30日以内に許可がないものは許可を得たものとみなす、という具合にしなくては。

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