豊臣秀吉のやり方は嫌いだな
問 秀吉の話が出ましたが、ブームを呼んだ秀吉とか家康とかいう本をお読みになりますか。
答 なかなか読めないですネ。ほんとうにものぐさでしょうがない。僕の豊臣秀吉はひとから聞いたり、映画とかテレビでみたものを土台にしているだけで。
小説なんて本物は書いてないもんネ。しかし、私は秀吉が死んでゆく時に、徳川家康とか皆、呼んで、秀頼を助けてどうだ、ああだとせがれのことを頼んだりしているが、僕は間抜けだと思うよ。おかしいと思うな。日本は豊臣家のもののように考えているところに問題があるんじゃないかな。僕は大嫌いだな。
問 社長はオーナーであるわけですが、オーナーである以上、変な経営をされると例えば、自分の実入りにも響いてくるということもある。その意味でも、本田技研に対して、ノータッチでいるというわけにはいかないでしょうね。
答 もちろん、ノータッチといっても縁を切ってしまうわけではない。株主の一員として残るだろうし、株主の財産を守るためにも、みなきゃならない義務がある。自分のためだけということだったら渡しませんネ。死ぬまでやるよ。死ぬまでやりさえすれば、安心して死ねるもんな。あとはわからねェんだからな。私はそんなに深くそこは考えてないな。
問 後継者をお決めになる基準というのはあるのですか。
答 いや基準というものはないけれども、副社長と早く決めて、大体そっちの方向へ……。ふだん一緒にいますからね、わかりますよ。ずうっとこうみて、それをピックアップして持ってきて、やらしてきていたですからネ。
後継者選びはその人の歴史を買う
問 昔、大臣なんていうのは、それなりの服装させて、二重橋を馬車で渡れば誰れでも格好はつくと言った人がいますが、会社の後継者の場合どうでしょう。
答 そうは思わんネ。もしそうであるならそんな苦労はしないよ。20年も。
問 しかし、人は責任を持たされると伸びるという面はあるでしょう。
答 それはある。人というものは責任を持たされればやるでしょうし、伸びます。しかし、その人のやってきた行為が適切であったかどうかということが大事なこってす。私たちはやはり、その人のいままでの歴史を買って、未来を占って渡すよりしょうがない。未来なんかわかるのは神様しかいない。神様だって、わかっているかわかっていないか、聞いたことないからわかんないけどさ。われわれはあくまで、その人の人となり、功績を信じて、未来にこうであろうという線を画いて渡すわけです。
ところが、いまの二重橋を服装整えて渡せばいいという話だけど、あちらの方は簡単にスゲ代えられるもんネ。本田技研もちょこちょこ代わられたんじゃかなわんからねえ。僕は政治のことはよく知らんけどさ。
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