資源さえ乗り切れば将来は明るいが

 経済力はついたが、ひ弱な面が目立つ日本が置かれた世界の立場はむずかしい。外国も日本がどう行くかについて予測し難いので不安になっていますね。

 戦争に敗れても、はい上がってGNPが第2位になるというエネルギーがどこへ行くのか、外国が不安にかられて眺めるのは当然だ。世界の人は主として三つのことで日本に疑問を抱いている。

 第一は経済大国が軍事大国化して核保有国になるのではないかという不安だ。第二は日本の発展が世界平和によって支えられている。特に日本の安全はアメリカの軍事力によって守られている。日本はこれに対し、何をもって報いるのかという疑問です。

 第三が経済問題だ。15年間、先進諸国の2倍半の成長を続けてきて、これ以上まだやるのかという疑いだ。成長し続けるならば世界市場を食い荒らすだろう。有限ということが明らかになった地球上の資源に日本はどう対処するのかという不安が広がっている。

 この三つのうち、初めの二つはしだいに理解が深まっている。軍事大国化とか核保有は考えられないとわかってくれ始めている。第二の問題は「ゆとりの出てきた日本が発展途上国に援助をふやそうという気持ちはわかった。あとは態度で示せ」ということになっている。

 いまだに世界の人が全然わからないのは、日本が世界の経済秩序を破壊するのではないかという恐れだろう。

 私は日本経済の先行きは明るいとみています。ただ黒一点は資源問題だ。新全総計画の最終年度、昭和60年には世界の鉄鉱資源の7割を日本が使う勘定になっているが、こんなことは世界が黙ってみてやしませんよ。すでに石油に端的に問題が出ていますが、やはり日本は世界平和の下で順調に資源がはいる状態でないと生きられない。その角度からも、鮮明に、かつ大胆に高度成長政策を安定成長政策に転換しなければならない。

 もちろん、いっきょに成長率を下げるわけにはいかない。数年後に目標を置いて、安定成長に誘導する舵取りをしないと、日本は孤立化して袋叩きにされて元も子もなくなる。そこで資源問題さえ乗り切れば、先行きは概観して明るい。

 公害、住宅、交通、福祉の遅れという問題があるが、これだけの経済力、財政力があれば、解決できない問題などないんです。ですから、あせっちゃいけない。着実な姿勢でやれば、イライラの原因は必ず解決する。それから、やはり外交は資源外交的な色彩を強めていかないとね。

すべて「あせっちゃいけない」のだが

 その資源外交も、モデレートな経済に切り替えた上でのものでなくてはならないというお考えですね。

 世界的に資源が不足しているので、各国が神経質になっている。だから、われわれは国際水準というか国際並みのことをやっているということで、初めてのエクスキューズも成り立つ。世界の平和と秩序に貢献し、協力していることで、初めて安定した資源が割り当てられる。

 いまの内閣はそういう路線に沿っているんですか。

 そう主張をしているんだが(笑い)。私ひとりの内閣じゃないからね。

 「あせっちゃいけない」というのは、先日の新幹線網計画の決定を慎重にという問題にもつながるんですね。

 そういう意味を込めているんだが。それに皆が地価や物価の問題を心配しているときに、地価の高騰をあおるような、また物価を刺激するようなことはどうか――という提言をしているわけです。

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