引退後はオフィスに顔出さない

 では、ウェルチ会長が引退してもGEに混乱は生じませんか。

 心配無用。私は数年前から後継問題に関しては必死に計画を練ってきました。もし、後継者への移行がうまくいかなければ、私の約20年におよぶCEOとしての仕事は、無に帰すと思っています。私の評価は後継者がどんな仕事をするかで決まるのです。

後継者問題は全く心配ない。
組織には若返りが必要だし
優秀な人材がたくさんいる

 私は後継者の応援団長になるつもりです。でも、私が声援を送るのはスタンドからです。試合をするのは後継者であり、応援団長がグラウンドに下りてはいけない。私の前任者がそうだったように、私も引退後はオフィスには行かないし、取締役会にも残らない。

 後継者に求める資質は何でしょう。

 後継者に限った話ではありませんが、GEのすべてのリーダーには「4つのE」が必要です。

 まず、エネルギー(Energy)。ビジネスがグローバルに広がる時代にあっては、過酷なスケジュールに耐えられるエネルギーが必要です。次に社員をエナジャイズ(Energize=活気づける)能力。インターネットなどを通じて情報共有が進む21世紀には、リーダーは人にエネルギーを与えるコーチとして優れていなければなりません。

 3つ目がエッジ(Edge=厳しさ)。時には部下に過酷な要求ができる厳しさ、イエス、ノーをはっきり言える決断力が必要です。「たぶん」とか「1カ月後にもう一度検討してみよう」では話にならない。最後にエクシキューション(Execution=実行力)、ビジョンを結果につなげる一貫した能力です。新しいビジネスを生み出さなければ、インターネット戦略に意味はなく、新しいサービス事業を開拓できなければ、サービス化は単なる題目に過ぎません。

 最後に引退後のプランを教えてください。

 申し訳ありませんが、何をやるつもりかは今はお話ししたくありません。ただ、何かを始めるつもではあります。幸い健康ですし、ビジネスを愛している。ワクワクするような楽しいことを始めたいと思っています。今度は私の再生です。

傍白

 ウェルチ会長との単独インタビューは、小生にとってこの6年間で3度目になります。最初はニューヨーク駐在時代の1993年、日本に戻って96年、そして今回です。驚くべきことに、会うたびにGEの経営スタイルは構造的に進化しています。

 同会長に最初に付いた渾名は、「ニュートロン(中性子)ジャック」でした。大胆な人員削減策を、建物は残すが人はいなくなる中性子爆弾になぞらえたもので、最初のインタビューでこの点に触れると「ひどい渾名だったね」と苦笑されました。しかし、93年の時点では、ワークアウトに代表される草の根からの活性化策が実り、ハード(事業)のリストラに代わって人材を生かすソフトのリストラが前面に出ていました。もうニュートロンジャックは死語同然でした。

 96年でのトピックは全社的な品質管理策「シックスシグマ」です。これによる持続的な収益改善は鮮明で、米国内ではウェルチ流経営に関する書籍が数多く出版され、評価はうなぎ登りになっていました。そして今回はネット時代への戦略を明快に打ち出したのが印象的でした。ウェルチ会長に対しては20世紀を代表する名経営者の1人との評価が定着しています。

 時代に合わせてこのように機敏に舵を切れるのは、同会長自ら誇りにしているGEのラーニングカルチャーがあるからこそでしょう。実際、ワークアウトのルーツは米国民主主義の原点であるタウンミーティング(自治体の会議)で、シックスシグマは日本のTQC、ネット対応はシリコンバレーの企業群から学んだものです。

 日本企業が活力を失った大きな理由の1つに、バブルの時期、「米国から学ぶものはもう何もない」と発言するほど傲慢になったことが挙げられます。米国を代表する名門大企業ながら、他者の優れたアイデア、ノウハウを吸収し、自らに合った形で消化してきたGE。そこにこそ、日本企業が学ぶべきものがあるように思われます。

次ページ GEを理解するためのキーワード