インターネットを使った新しいビジネスモデルによって、あらゆる既存モデルが脅威にさらされている時代です。むろん、GEの中にも様々な軋轢はある。しかし、何もしなければ、いずれ誰か他人にビジネスのやり方を変えられてしまう。ならば、自分たちで変えてしまった方がよいに決まっている。

 GE社内には「デストロイ・ユア・ビジネス(あなたの仕事を破壊せよ)・コム」という組織があります。名前のとおり、既存事業のビジネスの仕組みを破壊し、インターネット時代に合致した新たな仕組みを創るのがこの組織の役割です。彼らは、本社とは離れた場所で仕事をし、既存の事業部門とはあまり接触しないようにしている。事業部門はどうしても今までのやり方を守りたい、という気持ちが働きます。そうした現状維持のメンタリティーから解き放ち、ゼロベースで自由にアイデアを出してもらう必要があります。

 ウェルチ会長自身、これまで指示や伝達事項をファクスを使って伝えていたのを、電子メールを多用されるようになったとか。これによって何か変わりましたか。

 電子メールは客観的で感情を排した情報交換に向いたメディアだと思います。ですから、30万人の社員に事実だけを伝えたい時には電子メールを使っている。しかし、ファクスも相変わらず愛用し続けています。

 ファクスは、私の感情や情熱も込めて何かを伝えたい時に使う。手書きの文字には強い感情が表れます。私が怒っているのか感激しているのか、私の手書きを読み慣れている社員は、ファクス紙の上にある文字から正確に読みとってくれる(笑)。こんな真似は電子メールではちょっと難しい。

 サービス事業の拡大も、伝統的な製造業の業態を変える挑戦と言えますね。

 金融サービスやテレビ放送など純然たるサービス事業の比率は売上高ベースでGE全体の5割を既に超えています。これ以外に、ジェットエンジンや医療機器、電力システムといった従来型の製造業分野でも部品交換や修理、メンテナンスなどのサービス事業を重視しています。「サービスの比重を高める」と言うと、「GEはもうモノ作りが嫌なのですね」と言われることが多いのですが、これは明らかな間違いです。

 偉大な技術なしには偉大なサービス企業にはなれません。30年前、米国には数多くのGEのサービスショップがあった。電動モーターを修理する店でしたが、やがてもっと低コストで修理サービスを提供する「パパママ店」に顧客を奪われ、撤退せざるを得なくなった。そこから得られる教訓は明白です。常に先端技術を製品に盛り込み、技術的な主導権を握らなければ、サービスは提供できない、ということです。つまり、ナンバー1・ナンバー2戦略は、サービス展開においても、重要なのです。

 どの会社でも作れる普通の電動モーターなら、誰でも修理ができてしまう。

 そうです。白い作業つなぎを着て油差しを手にスパナを回すようなサービスなら、GEに価格競争力があろうはずがない。

 ボーイング777に搭載されている世界最大の推進力を持つジェットエンジン、「GE90」は我々にしか作れない。電力システム部門は熱効率の高さで世界最高のパワータービンを有している。我々が作るCTはライバル企業のどの製品よりも撮影速度が速い。こうした技術面で主導的な製品を抱えるからこそ、我々は付加価値の高いサービスを提供できるのです。

 ウェルチ会長は2000年初めにも後継者を指名して引退すると発言している。このCEO交代を不安視する声をしばしば耳にします。GEの「2000年問題」は、ジャック・ウェルチの引退だ、という意見です。

 私が引退するのは、疲れたからでもないし、65歳になるからでもない。組織には再生、若返りが必要だからです。社内には若くて優秀な人たちが自分の出番を待っている。私のやり方を見て、「自分ならこうやるのに」と違った考えを持っている人たちです。彼ら彼女らの新鮮なアイデアを実行に移すチャンスが必要です。

笑いが絶えなかった、10月初旬、来日時の社員たちとのパーティー

 私はたった1人で会社を経営してきたわけではありません。雑誌の表紙を飾ったり、こうしてインタビューを受けるのは私1人でも、会社を動かしているのはチームです。そしてその中には優れた人材がたくさんいる。1~2年後には、「あの時、日本にやってきたGEの前会長は何ていう名前だった?」という会話が交わされているでしょう(笑)。

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