インターネット事業は私のビジネスキャリアの中で最も大きな挑戦と言えるでしょう。インターネットは企業と社員、企業と顧客の関係を恒久的に変えてしまうからです。すべての企業活動が透明化され、情報は一握りの幹部による独占から、全社員に行きわたるようになる。

 こうなると、管理職の役割は変わらざるを得ない。部下が知らない情報を握っていることによってのみ権威付けされたような管理職は存在意義を失う。今後、管理職に必要となるのは、コーチとしての資質です。部下のエネルギーを引き出す力を備えなければいけない。また、顧客が、受発注の状況や在庫の有無といった企業の内部情報を把握できるようになるため、管理職の能力不足やミスはひときわ目立つようになるでしょう。

 インターネット分野においては、新興のベンチャー企業が勢力を急拡大しています。巨大企業GEは、彼ら新興ベンチャーとどう戦いますか。

 GEの企業規模がインターネット事業において弱点になるとは考えていません。むしろ逆です。

 ブランド力と実行力。この2つがインターネット事業を成功に導くカギです。(インターネットを使った書籍直販の)アマゾン・ドット・コムは、既に米国では知らない人のいない強力なブランドです。いま彼らは全米各地に倉庫を建設している。なぜか。顧客との約束を確実に実行するためです。品切れや配達の遅れによって、顧客を失望させないためです。

 ではGEはどうか。我々のブランドは世界中に知れわたっている。この点で極めて有利な立場にあります。実行力はどうか。我々はシックスシグマを通じて業務プロセスを飛躍的に改善する手法を学んできた。顧客ニーズをつかみ、それを迅速かつ正確に実現する力を持つシックスシグマ企業ほどネットビジネスにふさわしい組織はない、というのが私の信念です。

 このところ、ウェルチ会長は「GEはネットビジネスの展開をもっと急がなければいけない」と繰り返し主張している。現状に遅れを感じているのではないですか。

 あらゆるビジネスにおいてスピードアップは欠かせない条件であり、変化の激しいインターネット分野においてはなおさらです。しかし、GEが他社に比べて遅れている、というのは全くの誤解です。

インターネット事業は
私のキャリアの中で最大の挑戦。
ブランド力と実行力がカギ

 GEのプラスチック事業部門では、ポリマーランド・ドット・コムというウェブサイトを今年初めに開設し、わが社だけでなく他社製品も含め、あらゆる種類のプラスチックをインターネット上で販売している。開設後10カ月にあたる今年末までに、売上高は5億ドルに達する見込みです。もし、我々が新興ベンチャーなら、新聞は連日書き立てているでしょう。設立1年足らずで年商5億ドルもの規模になったネットビジネスというのはほとんど例がないはずです。

 ライバル企業の製品まで販売して大丈夫ですか。

 それが何か問題でしょうか。インターネット上で他社の製品も同時に販売することで、わが社の顧客にワンストップショッピングの利便性を提供できる。顧客は4つの会社のセールスマンと別々に商談する必要はなくなり、素早く必要な製品を手に入れ、彼らのビジネスを加速できる。それがすべてです。

 例えば、医療機器事業部門では、主力とするCT(コンピューター断層撮影装置)やMRI(磁気共鳴画像装置)以外に、他社の付属機器をインターネット上で販売している。この結果、既存顧客に対する売上金額は拡大し、新たな顧客の開拓にも結びついた。つまりインターネットを使い、新しい価値を顧客に提供できれば、マーケットは確実に大きくなるのです。

 インターネットの威力は認識していても、流通網に大きなダメージを与えかねないため、ネットの本格利用をためらう企業は少なくありません。特にGEのような大企業の場合、インターネットへの注力は、様々な面で大きな摩擦を生んでいる、と思いますが。

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