大企業とスタートアップが手を組む。この構図を「どうせうまくいかない」と考える人は少なくありません。

 私がグノシーを創業した2012年に比べて、スタートアップの資金調達額は増加しています。同時に、プロダクトのみで突破できるビジネス領域はどんどん狭くなっています。世の中でのスタートアップに対するニーズは高まっているけれど、1社だけで戦い続けるには難しい時代といえます。そのため、大企業との提携や協業に踏み切るスタートアップは多い。LayerXもその1つです。

(写真:的野 弘路)
(写真:的野 弘路)

 なぜ「大企業とスタートアップの協業はうまくいかない」のでしょうか。私なりに従来の大企業とスタートアップの関係性を分析してみると、その多くが「受発注」関係に原因があると気付きました。

 特にデジタル領域に不慣れな大企業にとって、新規事業としてIT分野を担う部署を発足させるのは至難の業です。かつ、ITを1つのシステム部門だと捉える風潮が強いため、スタートアップに開発を委託しよう・丸投げしようという意識が根強く、これが「大企業とスタートアップの協業はうまくいかない」につながっています。

 受発注という仕組みを否定しているわけではありません。ここで強調したいのは、受発注関係では必ずしもお互いに同じ成功を目指しているとは限らないということです。受注者(スタートアップ)の成功は受注金額の最大化、発注者(大企業)の成功はコストを抑えることが成功への近道なので、むしろ相反するケースが多い。すべての大企業とスタートアップの関係性がそうなっているわけではありませんが、このあたりを誤認識したまま「大企業だけが得をしている」「スタートアップが損をしている」と言い切ろうとするのは少し違う気がします。

 大企業とスタートアップは受発注関係ではない形で手を組めないのか? ──LayerXでは20年4月、三井物産とSMBC日興証券、三井住友信託銀行の4社で新会社「三井物産デジタル・アセットマネジメント(以下、MDM)」を設立しました。この取り組みは、今までの「大企業とスタートアップの関係性」から一歩踏み込んだものです。ポイントは「リスクの取り方」でした。

成果とリスクを分け合う

 MDMは、デジタル技術を活用して不動産などの実物資産のアセットマネジメント事業を展開しています。21年10月に営業開始して、22年10月末時点で運用資産総額は約1000億円と順調に成長しています。営業開始からわずか1年で上場REIT(不動産投資信託)に匹敵するような規模感の事業が生まれています。MDM設立のやりとりを始めたのは19年。現在のLayerXの主力サービスである「バクラク」もなかった時代で、初めてのビッグプロジェクトでした。

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