米国で時価総額1兆円規模の企業を生む法人支出管理(BSM)

 BSMとは、請求書や経費精算、稟議(りんぎ)、法人カードなど企業で発生するお金周りの手続きややりとりを一気通貫できるソフトウエア。米国ではBill.comやCoupa、Expensifyなどのスタートアップが立ち上がっており、時価総額が1兆円を超える企業も複数登場しています。

 LayerXは「新たな経済基盤」をつくり出すために、ソフトウエアの力でデジタル社会への発展を後押ししたいと考えています。業務効率化のSaaSではなく「企業にとって必要不可欠なビジネスインフラ」になりたい。そのため、ユーザーの声を基に請求書や電子帳簿保存に関するサービスなどを展開し、2022年5月には「バクラク経費精算」をリリースしました。

 そんななか、社内でも「バクラクをひと言で表現すると?」という声が上がることもありました。請求書や経費精算、ワークフローもフォローできるシリーズの立ち位置に該当する言葉が日本にはまだなく、非常に悩みました。そして出合った言葉がBSMです。現時点で、これほどバクラクシリーズで実現したいものを表した言葉はありません。

 日本国内で請求書や経費精算の処理にかかる人件費は年間3.3兆円(請求書1.1兆円、経費精算2.2兆円)に上るといわれています。

 サービスを活用していただいている企業の方々の業務効率を独自で計測すると、サービス導入後に作業時間を70~80%カットできていることが分かりました。もしもバクラクを日本中に普及できた場合、単純計算をすれば年間3.3兆円のうち75%の作業時間を削減できる。これはとても大きなイノベーションです。

「勝ち筋が見えなかった」はずの領域で得たインサイト

 ここまでの話だけでは、LayerXが当初からBSMのようなサービス群を目指していたように感じるかもしれません。実は、そうではないのです。むしろサービスを提供開始してしばらくは、経理業務の自動化にこだわっていました。BSMの領域から考えると、以前までのLayerXは経理業務に閉じた視点でした。

 トップの私自身、経費精算サービスへの参入は当初反対すらしていました。なぜなら、既に多くのサービスが参入していて、勝ち筋が見えなかったからです。おそらく、社内の誰よりも懐疑的でした。

 海外では経理業務だけでなく、その前段階で発生する作業(=プレ会計)の領域にニーズがあることは耳にしていました。ですが、海外で伸びている領域が必ずしも日本でも該当するとは限りません。

 様々な新規事業を立ち上げてきた経験則ですが、いくら2次情報を集めても正しい意思決定はできず、最後は1次情報を信じたいと思っています。新規事業で成功する一番の条件は、ユーザーの課題のインサイト(洞察)をしっかり得ているもの。逆に、失敗する要因は「海外ではやっているから」「あのサービスが伸びているらしいから」といった2次情報に頼っているものでした。

 アイデアのとっかかりとして2次情報から始まること自体は問題ありません。ただ、アイデアの検証をしていくに当たって、もう一歩深く踏み込んで本当にニーズがあるのか、サービスに落とし込むならどうするのか、収益を上げるにはどんな方法があるのか。それらを知るには、ユーザーの課題のインサイトがないとうまくいきません。これを私は“1次情報”と表現しています。

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