(写真=的野 弘路)
(写真=的野 弘路)

 2023年10月から施行される適格請求書等保存方式(インボイス制度)について、すでにご存じの方は多いかと思います。ところがこの制度、ほとんどの企業が「経理部だけに起こる問題」と捉えています。

 はっきりと言います。インボイス制度は、むしろすべての企業・経営者に関わる法改正です。

 消費税10%への引き上げや複数税率導入等に伴い開始されるインボイス制度においては、仕入税額控除を受けるために一定の要件を満たす請求書や納品書等の受取・保存が求められ、適格でない請求書だと税金が返ってきません。全請求書で対応しなければ自社のコストがかさみ、営業利益が10%以下の会社の場合は赤字に陥る可能性が高くなります。

 インボイス制度が施行されれば、どれが控除を受けられる請求書なのかを確認する必要があります。そのうえ、適格な請求書の定義も複雑で、パッと理解するのは至難の業。目視チェックや手入力のようなスタイルのままでは業務コストが跳ね上がることは容易に想像できます。そうした手作業をすべてソフトウエアで自動化できる。私はそれを示していきたい。

 そもそも経理業務は、経理担当者だけにとどまるものではありません。稟議(りんぎ)や経費を申請するのは誰でしょうか? 請求書を回収するのは? それらを承認し、経理担当者へ申請するのは?──すべて現場で働く社員たちですよね。経理業務を効率化するサービスは多種多様に登場していますが、ここでも「経理部だけの問題」という誤認識によって、包括的な解決ができていない背景がありました。

 前回(参考:どん欲に泥臭く「100社ヒアリング」を続ける本当の理由)お話ししたとおり、LayerXでは「100社ヒアリング」をして、そこで得た声を基に機能開発や改善を行うサイクルがあります。その中で分かったことは、経理業務の悩みの8割が「現場から請求書が届かない」「どの申請が漏れてどの請求書にひも付くのか、該当先が分からない」などの調整や管理にまつわる仕事。自動仕訳といった経理に特化した機能は、ざっくり残り2割くらいの悩みでした。

ビジョンとリーン開発の“行ったり来たり”が最良

 消費税10%への引き上げ、新型コロナウイルスによるリモート化、電子帳簿保存法、そしてインボイス制度──企業間取引にまつわる法律や環境は絶えず変化し続けています。

 LayerXでは、22年1月に施行された電子帳簿保存法に先駆けて21年12月に「バクラク電子帳簿保存」をリリースしました。まさにさまざまな企業をヒアリングして得たヒントから生まれたサービスでしたが、要望を基にした開発を進め過ぎたという反省があります。

 しかるべきタイミングでサービスを提供することは重要です。しかし、電子帳簿保存法もインボイス制度も、施行された後の世界観は未知数。そんな少し先の未来でどんな機能が必要になるのかは、誰にもわかりません。

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