「100社以上にヒアリング」が本当にいいと言える根拠

 「100社以上にヒアリングする」とは根性論に思えるかもしれませんが、ここには私なりの根拠があります。

 ソフトウエアの世界でよくある勘違いが「インターネット上にサービスを出せば、誰かが見つけて勝手に使ってくれる」という考えです。これは幻想です。多くの人々が、新しく誕生したばかりのサービスに対して興味を持っていません。

 例えばBtoB(企業間取引)サービスのコンバージョンレート(顧客転換率)は7~8%です。メルカリのような誰もが使っているように感じられるメガサービスですら日本の全人口における利用率は10~20%です。そう考えると、サービス立ち上げ時はもっと未熟なので、100人に1人が使っていれば御の字です。逆にいうと、100人中99人が「NO」という可能性が高いわけです。

 仮に「いいね!」と言ってくれる人がいたとしたら、それはあなたの友人や知り合いではないでしょうか。友人や知り合いから届くフィードバックは、基本的にはポジティブなものが多いです。100社以上へのヒアリングでは人間関係やサービスに対して強く興味を持っていない人たちも含まれるため、コンフォートゾーン(心地いい環境)を超えます。つまり、「井の中の蛙(かわず)」にならず、本当の意味での「大海」を知ることができるのです。

 サービスづくりは「これがあったほうがいい」という強い信念からスタートします。100社以上にヒアリングした末に「いらないかも」と思ってしまうような信念では、サービスはつくれません。バクラクを例に挙げると、請求書のデータ化は手入力ではなく自動であるべきだし、経理業務は楽しくあるべきだという信念があります。ヒアリングしているなかでその信念を否定されることがあったとき、むしろ「何がだめですか」と食い下がれるかどうかが肝になります。

 何より「100社以上にヒアリングする」とは、チームの覚悟も試されます。コンフォートゾーンを超えるため30社にヒアリングしたあたりで厳しい意見が続くこともあります。「必要ない」「ニーズがない」もたくさんいただくため自信がなくなってきます。ただ、そこで「あと70社、アタックしてみよう」となれるか。100社以上にヒアリングするとは、まさにサービスをつくる側である自分たちの信念も試されています。

 よく「PMF(プロダクト・マーケット・フィット)したら人員を増員したりマーケティング費用を拡大したりしてアクセルを踏むべきだ」といわれます。私の考えは逆です。先にやると決めてアクセルを踏む。「足りないもの」は、サービスをリリースしてみないと分かりません。想像しながら開発を進めていくことも難しいはずです。スポーツで例えるなら、商談が試合とするなら、開発は練習といったイメージでしょうか。練習ばかりしていても、試合に勝てないのです。

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