「日本は29位」――。

 2022年9月、スイスのビジネススクールIMDが世界デジタル競争力ランキングを発表し、日本は63の国と地域のうち29位で過去最低の順位となりました。この結果を見て、私は非常に危機感を覚えました。ランキングの詳細を見ると、「人材」が50位、「デジタル/技術的スキル」が62位、「ビジネスの俊敏性」は62位。さらにその中のサブ因子「機会と脅威への素早い対応」「企業の俊敏性」「ビッグデータとアナリティクスの活用」は63位と最下位でした。

(写真:的野弘路)
(写真:的野弘路)

 今やビジネスにおける意思決定にデータが深く関わっていることはご存じのとおり。加えてそこに対していかに素早くビジネスを構築するかの俊敏性も、競争変化の速いデジタル領域においてはとても重要です。このままデジタル競争力が低い状態が続けば、世界中から取り残される可能性も高い。「29位」という数値以上に、その詳細について私は深刻な問題を感じました。

 その対策として、教育機関では既にデジタル教育をスタートしています。しかし、デジタル教育を受けた子どもたちが大人になり、意思決定の場に立つまでには少なくともあと20年はかかるでしょう。ただでさえ進化が速いデジタルの世界で、20年は気が遠くなるような時間です。

 教育的観点でもデジタルに注力しようとしているのですから、日本国内で危機感を持つ人は少なくない。しかし、なかなかデジタル競争力が上がらないのはなぜでしょうか。まずは、その原因をひもといてみましょう。

日本がデジタルに投資できていない根深い要因

 デジタル競争力を上げられない大きな要因に、日本企業に根付く外注文化とシステムインテグレーター(SIer)へのIT人材の偏在があります。

 SIerとは、システムのコンサルティングや設計、開発、運用を一貫して請け負う事業者のこと。ビジネスとデータが今ほど連動していなかった時代は「システム運用=コスト」の認識が強く、多くの企業がSI事業を行う他企業へシステム開発を外注してきました。中にはエンジニアを採用して社内でシステム開発を行う企業もありましたが、そのほとんどが「システム部門」として本事業から切り離されていたのです。

 冒頭でもお伝えしたとおり、現在は「システム運用=コスト」ではなく、むしろ「システム運用=ビジネスのコア」へと変化しています。システムは保守・運用するのではなく、ソフトウエアと捉えて、アップデートし改善するというパラダイムシフトが起こったといえるでしょう(この記事では意思を持って、システム開発ではなくソフトウエア開発と呼び替えることにします)。

 事業のコア部分を外部へ切り出していては、自社でのコントロールが難しく、売り上げも上がりません。コア部分なのに外注してしまっているため交渉力をなくし、コストがかさみ続けている企業もあるはずです。

 ただソフトウエア開発を外注し続けることで発生する弊害は他にもあります。それは「社内にノウハウがたまらないこと」です。

次ページ デジタルの知見を経営資源に変える「メッシュ型組織」とは