ミスを無くすには、原因の特定が欠かせない。しかし、ミスの当事者に理由を聞いても実態は見えてこないのが現実だ。現場の実態を把握する3つの手法とは。ミスが無いハイパフォーマーの共通点とは。行動科学マネジメントの第一人者・石田淳氏の著書『無くならないミスの無くし方』(日本経済新聞出版)から一部抜粋してお届けする。

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繰り返し発生するミスを特定する

 行動科学マネジメントによるミスや事故の防止策は、「安全行動を増やすことによって危険行動(ミスや事故)を無くすこと」です。
 そのためにはまず、ミスや事故の実態を特定する必要があります。

 このことを経営陣や管理職に伝えると、こんな反応が返ってきます。
「そんなことは、もうわかっています」

 確かにどんなミスが発生したか、どんな事故が起こったかは、把握できているかもしれません。しかし、その実態については、実はあまり目を向けていないのが現実です。

 この連載で「 ハインリッヒの法則」を紹介しましたが、ハインリッヒはまた、すべてのミスや事故の88%は不安全な行動に起因するとしています。

 つまり日常業務において無意識下で当たり前のように繰り返されている作業=行動が、多くの事故の要因になるのです。

「ミスや事故の実態はわかっている」とのひと言で終わらせずに、まずは「ミスや事故が繰り返し発生している現場の環境」を俯瞰(ふかん)してみることが大事です。

現場の姿を知るサーベイ

 ミスや事故の根本原因を知るために現場を見る。その具体的な方法が「サーベイ(調査)」です。
 サーベイは「アンケート」「インタビュー」「観察」という3段階で成り立ち、専門的な知識や技術を必要とするものではありません。

 ただし、会社の規模にもよりますが大がかりな作業にはなるでしょう。企業活動のどこにミスの原因が潜んでいるかはわかりません。そのため、全従業員を対象として行う必要があるのです。

 会社の事情により、全従業員を対象に行うことが難しい場合は製造部門などミスや事故が大きな問題につながりかねない部署だけで始めるケースも考えられます。
 しかし、それだとミスや事故の根本原因の特定が難しくなることもあります。できるだけ早期に全社で行うことをおすすめします。

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