どんなに注意してもミスが無くならない部下。そんなときは2つの理由が考えられる。その2つとは? ミスを無くすために上司として取るべき行動とは? 職種を問わず効果が高い「60秒ルール」とは? 行動科学マネジメントの第一人者・石田淳氏の著書『無くならないミスの無くし方』(日本経済新聞出版)から一部抜粋してお届けする。

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「やり方」を知らないからできない

 決められたことができず、ミスばかりしてしまう人に対して、ミスをする原因を、その人の「性格」や「やる気」「姿勢」の問題としてとらえても解決にはつながりません。

 ミスをする理由をその本人に求めて、解決を図るのではなく、その人がなぜそうした行動を取るのか、そのメカニズムを理解して、そこから解決していく必要があるのです。

 行動科学では、人が物事をできない理由は2つあるとしています。
 1つは「『やり方』を知らないから、できない(ミスをする)」という理由です。 そして、もう1つが「やり方を知っていても『継続の仕方』を知らないから、できない(ミスばかり)」という理由です。

 まず「やり方を知らない」について説明しましょう。

知識と技術に分けて教える

「やり方」とはすなわち、知識や理論、技術のこと。何を、どうやって、どんなことをポイントとしてやればいいかという、「スキル」に該当する部分です。
 言い換えれば、これは「どんな行動をすればいいか」「どのように行動すればいいか」ということです。

「機械の操作はどうやればいいのか?」「正しい接客の手順は?」「書類の書き方は?」などを知らなければ、ミスが起こるのは当然でしょう。

 では、「ミスの無いやり方」、つまり「取るべき安全行動(ミスや事故に結びつかない望ましい行動)」を部下に教える際の注意点は、どういったものでしょう。
 上司にとって必要な作業は、教える内容を「知識」と「技術」に分けることです。

 たとえば、基本的な作業のルールやマナー、仕事に必要な道具の種類や使用法などを教えることが「知識」に該当する部分。
 そして実際の動作、道具の扱い、書類等の書き方を教えるのが「技術」を教えるということになります。

 もちろん、仕事によっては知識と技術を明確に区別することが難しい場合もあります。そんなときは「『知識』は、聞かれたら答えられること」「『技術』は、やろうとすればできること」と考えればいいでしょう。

 こうして教える内容を2つに分けて整理しておくことで、相手に「どんな知識、どんな技術が不足しているのか」が見えるようになります。
 また、相手に順序立てて物事を伝えることや、「どこからどこまで教えればいいのか」の決定が容易になるのです。

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