カギは「ポジティブ」「すぐに」「確か」

「メリットのある結果」について、もう少し説明しましょう。

 行動科学マネジメントでは、行動の「結果」を、「タイプ」「タイミング」「可能性」の3つの組み合わせで考えています。

【タイプ】ポジティブ(Positive)か?ネガティブ(Negative)か?
【タイミング】すぐ(Sugu)に生じる結果か?後(Ato)で生じる結果か?
【可能性】確か(Tashika)な結果か?不確実(Fukakujitsu)な結果か?

 この組み合わせのうち、もっとも行動が繰り返し発生しやすいのが、「PST」、つまり、「ポジティブな結果が、すぐに、確実に」出るという場合です。

「ヒヤリ・ハットを報告したら、怒られずに感謝された(P)」「しかもその場ですぐに(S)」「もちろん毎回必ず(T)」……という図式ですね。

「特別賞与」は行動への影響が低い

 逆に、行動が繰り返し発生しづらい「結果」は、「PAF」(ポジティブ・後で・不確実)と「NAF」(ネガティブ・後で・不確実)の組み合わせのもの。即時性も確実性もないものは、ポジティブ、ネガティブに関係なく、行動の継続、習慣化の効果が薄いのです。

「ミスの報告は評価基準とする」と宣言してもなかなか報告が上がってこない。
 これも、「ミスの報告」という行動の「結果」として、「評価の対象となる」こと自体が、ポジティブではあるけれど、評価されるのは年度末、しかも不確実ということならば、「PAF」の組み合わせとなります。

 同様に「ミスをしなかったら特別賞与」といった特典も、実は行動を繰り返すためのメリットにはなりづらいのです。
 即時性と確実性を持つ。つまり、結果が「すぐに」「確かに」現れるものでなければ、行動への影響は小さい、というわけです。

「ヒヤリ・ハットが上がってこない」という職場では、「ポジティブな結果が、すぐに、確実に」出る仕組みとなっているかの見直しが課題となります。



シリーズ累計40万部超のロングセラー『教える技術』の著者で、行動科学マネジメントの第一人者が、職場からミスを無くす科学的方法論を豊富な事例と共に解説。

部下の“不始末"に日々アタマの痛い全リーダーの必読書。もちろん「自分のミス」を無くしたい人にもおすすめ!

石田淳(著) 日本経済新聞出版 1650円(税込み)

この記事はシリーズ「行動科学で解明 無くならないミスの無くし方」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。