企業の変革を進めると、必ずと言っていいほど抵抗勢力が現れ、もっともらしい反対理由を述べ立てる。だが、その事情をいちいち斟酌(しんしゃく)していては、改革の機を逃してしまう。
今回は『シン・君主論――202X年、リーダーのための教科書』より、リーダーの中途半端な情けがどのような悲劇を生むのかについて述べた箇所をご紹介したい。
人間は寵愛(ちょうあい)されるか、抹殺されるか、そのどちらかでなければならないということである。何故(なぜ)ならば、人間は些細(ささい)な危害に対しては復讐(ふくしゅう)するが、大きなそれに対しては復讐できないからである。それゆえ、人に危害を加える場合には、復讐を恐れなくて済むような仕方でしなければならない。
――『君主論』(講談社学術文庫)第3章より
不満分子は徹底的に叩(たた)き潰せ
なんともえげつない表現ではあるが、ここでマキャベリが言っているのは、「中途半端に情けをかけてはいけない」ということである。
自分に忠実で愛すべき人々に対しては、幸せな生活が送れるように君主として面倒を見る。
だが自分に敵意を向ける勢力や自国に不要と判断した者たちは、完全に抹殺しなければいけない。
なぜなら、相手に情けをかけて脅す程度にとどめると、その者たちは必ず君主に復讐しようと考えるからだ。よって不満分子を迫害するなら、徹底的に叩き潰すべきである。
直訳すると実に血なまぐさい内容になってしまうが、現代に置き換えれば、これはまさにコーポレート・トランスフォーメーション(CX)を進めようとするリーダーへのアドバイスになる。
組織を新陳代謝させようとすると、必ず抵抗勢力が現れる。
会社とは面白いもので、ある組織・部署・拠点を作ると、その瞬間から既得権益化が始まる。だから統廃合や撤収といった構造改革を実行するのは非常に難しい。
一度手に入れた権利や立場はどうしても手放したくないのが人間の本質だからだ。
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