米シリコンバレーの新鋭スタートアップとして注目を集めた「エアビーアンドビー」に50歳代で入社し、CEO(最高経営責任者)のブライアン・チェスキー氏のメンターとして、またホスピタリティー部門の責任者として活躍したチップ・コンリー氏。もともとはホテルチェーンの創業者で、ITとはなじみが薄かった彼が、大きく年の離れた若者たちに囲まれ、頼りにされたのはなぜか。地位や肩書ではなく、知恵と経験によって尊敬される「新しい年長者」としての働き方について、コンリー氏の著書『モダンエルダー 40代以上が「職場の賢者」を目指すこれからの働き方』から抜粋・編集してお届けします。第2回は「モダンエルダーが備える5つの特徴」について。

「モダンエルダー」とはどんな人物?

 アメリカで賢い年長者の集まりといえば頭に思い浮かぶのが、最高裁判事のイメージだろう。だが3億2500万の人口の中で賢い年長者はこの9人だけではない。

 海外の例で思い出されるのは、「ザ・年長者たち(エルダーズ)」と呼ばれる有名人の集まりだ。この集まりは起業家のリチャード・ブランソンと音楽家のピーター・ガブリエルが発起人となり、ますますお互いが頼り合うようになった今の世界、つまりグローバルビレッジでは多くのコミュニティが年長者の導きを求めているという考えに基づいて作った会だ。2007年にネルソン・マンデラ、グラサ・マシェル、ジミー・カーターなどの人道的活動で有名な世界的リーダーが参加して立ち上がったこの会は、彼らの集合的な経験と影響力を使って、今の世界が抱える喫緊の課題に取り組むことを目標にしている。

 しかし、ノーベル平和賞受賞者でなくとも、最高裁判事でなくても、モダンエルダーにはなれる。しかも、ほかの集団によくある伝統とは違って、男性でなくてもいいし、年をとっていなくてもいい。

 エアビーアンドビーで最も活躍している年長者のひとりが、誰より忠誠心があり限りなく賢く直感の鋭い最高執行責任者のベリンダ・ジョンソンだ。創業者のブライアン・チェスキーより15歳年上のベリンダは私の数年前にエアビーに入社し、私よりも長くあらゆる面でブライアンに適切な助言を与えてきた。マーク・ザッカーバーグよりも年長でフェイスブックのCOO(最高執行責任者)を務めるシェリル・サンドバーグにしろ、グーグル/アルファベット社で共同創業者のラリー・ペイジより15歳年上のCFO(最高財務責任者)であるルース・ポラットにしろ、モダンエルダーに共通する5つの特徴を見ると、性別は関係ないことがわかる。

 モダンエルダーは、特定の年齢を超えている必要はないし、会社の中で高い地位にいなくてもいいが、周囲の人たちより年長で賢くなければならない。25歳の若者に囲まれている40歳でも、40歳に囲まれている60歳でもいい。生物的な年齢が何歳にしろ、モダンエルダーは重みと謙虚さをいい具合に混ぜ合わせている。

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