物事をはっきりと見通す、前向きな影響を与える
4 俯瞰(ふかん)的な思考力
中年になると脳が一段階後退し、記憶とスピードが衰える。だが点と点をつなげ、物事を俯瞰してその核心を摑(つか)む能力は、かなり年をとっても伸び続ける。こうした物事をはっきりと見通す知性を持てる理由のひとつは、年長者の脳がより臨機応変にひとつの側面から別の側面へと切り替えることができるからだ。
精神分析医のジーン・コーエンは、この能力を「四輪駆動」にたとえ、この力のおかげで年長者はさまざまな部分ではなく全体を見ることができると言っている。また年長者の脳はより落ち着いて感情を抑えることができるので、冷静にパターンを認識できる。
5 奉仕の心
年を重ねれば重ねるほど、この世界の片隅での小さな自分の立ち位置がわかるようになる。そしてそれにつれてますます、これまでの人生での経験や物の見方を役立てて、未来の世代に前向きな影響を与えたいとも思うようになる。
(米国の詩人・評論家として著名な)ロバート・ブライは、年長者とは受け取るのではなく与える時がきたことを知っている存在で、彼らは森の中に驚異を追い求めてインスピレーションを得る。「意識にとっての知恵とは、自然にとっての荒野のようなもの」。(米国の生態学者である)ジョセフ・ミーカーはそう書いている。モダンエルダーが若い世代に残せるのは、この社会と自然に注いだ愛なのだ。
汚れのない驚きの目で世界を
人は歳を重ねるごとに人間らしくなる。ロード・オブ・ザ・リングの魔法使いガンダルフや、スター・ウォーズのオビ=ワン・ケノービのように、ただ賢い老人になるというだけではない。モダンエルダーは周囲の期待を気に留めなくなり、無駄話を楽しめるので、若者らしく無邪気に見えることさえある。
大人でありながら子供っぽさが残る現象を「ネオテニー」と言うが、心が若く世代を超越しているように見える年長者がいるのは確かだ。かつてウォルト・ディズニーはこう語っていた。
「周囲は私を『無邪気が服を着て歩いているようだ』と言うんだ。私は子供のように無邪気で人目を気にしないってね。多分そうなんだろう。いまだに私は汚れのない驚きの目で世界を見ているからね」
(訳:大熊希美、関美和)
人生100年時代、職場の賢者としてずっと尊敬される「新しい年長者」として働くために
著者はホテルを創業して経営したのち、シリコンバレーで注目のスタートアップ「エアビーアンドビー」の創業者に頼まれ入社。二回りも年下の若者たちに囲まれて、尊敬されながら楽しく働き成果を出す「モダンエルダー」としての働き方を解説します。
チップ・コンリー(著)、大熊希美、関美和(訳)、外村仁(解説)、2200円(税込み)
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