キーエンスの快進撃が止まらない。4月27日に発表した2022年3月期連結決算では過去最高の売上高を更新し、営業利益率は55%に達した。株式時価総額は12兆円を超え、トヨタ自動車、ソニーグループ、NTTに次ぐ国内4位につけている。従業員の平均年収(2021年3月期)は1751万円と、高年収企業の代表格である総合商社も上回る。
キーエンスが日本を代表する高収益企業であり続けられるのはなぜか。理由は、独自の育成手法を通じて鍛えられた一人ひとりの社員にある。
日経ビジネスLIVEではキーエンスの「強さの根源」を解き明かすため、3人の同社OBを講師に招いたウェビナーシリーズ(全3回)を開催した。6月2日の第2回に登壇したのは、キーエンス在籍時代に世界初・業界初の商品を企画立案した経験を持つ、コンセプト・シナジー(岡山県総社市)の高杉康成代表取締役だ。「潜在需要が宝の山 キーエンスの高収益生み出す商品開発」と題する講演をお届けする。
(構成:森脇早絵、アーカイブ動画は最終ページにあります)
中山玲子・日経ビジネス記者(以下、中山):本日は「キーエンスOBが語る強さの根源」シリーズの第2回として、「潜在需要が宝の山 キーエンスの高収益生み出す商品開発」をテーマに、コンセプト・シナジー代表取締役の高杉康成さんにご講演いただきます。高杉さん、本日はよろしくお願いいたします。
高杉康成・コンセプト・シナジー代表取締役(以下、高杉氏):皆さん、こんにちは。コンセプト・シナジーの高杉と申します。本日は商品開発について、具合例を交えながらお話しいたします。
まず、私の経歴などについて、少しだけお話しします。キーエンスには商品開発の役割がありまして、物づくり、設計、開発をする人たちがいます。それらの中で、私が経験したのは企画です。顧客のところに行って、どういうものを作ればいいのかを聞き、具現化して、企画書を通すという業務をやっていました。
開発というと、どうしても開発部門ががりがりやっているイメージがありますが、今回のお話は、企画立案をどう進めてやっていくかというお話になります。
皆さんもご存じの通り、キーエンスの特徴は、売上高営業利益率が50%を超えている点です。これは営業の強さだけではなく、今日お話しするようなユニークな商品、オンリーワン商品の開発が非常に大きく貢献しています。
オンリーワン商品力×強いソリューション営業力=高い利益率
高杉氏:なぜ高い利益率が出せるのか。これも私の分析ですが、1つは先にも触れた「オンリーワン商品力」。もう1つが、「強いソリューション営業力」です。営業の話は、第1回(参考記事:キーエンスの営業は「ライオンキング型」だから強い)でお話しされたのではないかと思います。徹底した情報収集や、自己成長の仕組みなどによって、平均的に高いソリューション営業を実現しています。そういった営業力とオンリーワン商品力が掛け合わさり、高い利益率を維持しているのです。
では、オンリーワン商品力とは何か。ポイントは4つあります。1つは、「商品企画専任スタッフ」。私はこの部門にいました。2つ目は、「企画担当主導の商品開発」。ここは重要なお話で、本日のトピックスの1つとなります。
3つ目は、「ニーズマネジメント」。あまり聞かれることはないかもしれませんが、顧客ニーズをどのようにマネジメントするのかが重要です。私もキーエンスを辞めてから、いろいろな企業をお手伝いさせていただきましたが、コンサルとニーズマネジメントをやっている会社はまだ見たことがありません。4つ目は、「マスカスタム商品開発」。要は、量産しつつもカスタム性のある商品を生み出すことですね。ここがうまいのが、キーエンスの特徴です。
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