営業がお客様に提案すべきこと

「お客様が何をやりたいのかという顧客の本質的なニーズを知ることが商品やサービスを買ってもらうために重要だと思いますが、そのために意識していることがあれば教えてください」という質問もありました。

天野氏:厳しいことを言うようですが、お客様のニーズをお客様に聞くようでは遅いでしょうね。お客様がどんなビジネスでどこに向かいたいのかは、お客様に聞くべきことの代表例だと思います。一方で、そこに自分たちの商材やサービスが組み合わさったときに得られる効果は、お客様に聞くのではなく、自分たちが提案すべきです。

 例えば、具合が悪くて病院に行った際に、医師から「どんな治療をしてほしいの?」と聞かれたらどう思いますか。「どんな食生活をされていますか?」「昨日はよく眠れましたか」などはもちろん聞くべきですが、どのように治療するのかという方針は医師が提案すべきです。それに納得できるかどうかで、患者はその医師に任せるかどうかを決めます。

 僕はいつも、営業はこのような先生(医師)のポジションであるべきだと思っています。お客様に聞く内容と、自分たちが提案する内容を混同してはいけません。基本的には提案型で話を進めなければ、営業の価値は発揮できないでしょう。

 

「商談相手が思わずうなるような営業はありますか?」という質問もありました。「うなるような」という意図は、たぶんそれくらいすごいという意味のように思います。

天野氏:前回の記事で触れたクルマのリースの営業では「コストや工数を削減できます」といった相手にとっての投資対効果を提示する例を出しました。私はこれを「バリュープロポジション(顧客ニーズが高く、ライバルが提供できていない独自の価値)」と呼んでいます。競合他社にはできなくて、自社だけが提供できるサービス、かつお客様が望んでいるものをきちんと抽出できている提案書は実は少ないのです。

 多少こじつけであっても、絶対的に自分たちだけが提供できるものは何かを伝えることが必要です。「競合より当社のほうが御社に2キロ近いです」といったメリットでもいいんです。「この距離の近さはうちの勝ちです」とちゃんと言い切る。みんな「ほかとはそんなに変わりません」と総論で語りがちなのですが、それではダメです。僕は社員に対して「自分たちに優位性がある項目を6個書き出すように」と伝えています。

 一方で、もし本当に差異化のポイントがないならば、作り込んでいく必要があります。魅力を作り込むことによって、自分たちの新しい商品企画、サービス企画にもつながっていきます。今の商材やサービスで永遠に勝負していかなければならないというルールはありませんから、足りなければどんどん作っていけばいいんです。

 さらに、その魅力をしっかりと提案書にしたためてほしいと思います。お客様が提案を理解するのは脳です。脳に情報を伝えるのは視覚の情報が7~8割だといわれています。言葉では1割程度しか伝わりません。そのため、提案書という形にして目で情報を受け取ってもらうことが大事です。それができるかどうかで、受け取る側の感動は大きく変わります。

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