快進撃が止まらないキーエンス。2022年3月期の決算では売上高が過去最高を更新し、営業利益率は55%に達しています。株式時価総額は12兆円を超え、トヨタ自動車とソニーグループ、NTTに次ぐ国内4位。従業員の平均年収(2021年3月期)も1751万円と、高年収企業の代表格である総合商社も上回っています。

 そんなキーエンスの強さに迫るために「日経ビジネスLIVE」では3人の同社OBを講師に招いたウェビナーシリーズ(全3回)を開催。5月19日(木)に開催した第1回ではキーエンスで20年近く働いた経験を持つFAプロダクツ(東京・港)会長の天野眞也氏が登壇しました。キーエンスで社長直轄プロジェクトなどを複数率いた「営業のプロ」が、さまざまな業界の生産現場を見てきた経験などを基に、『顧客の心をつかむ営業力』をテーマに熱く語りました。

 講演では、視聴者のみなさまから約90の質問をいただき、終了予定時刻をオーバーする形で天野氏が回答しましたが、お答えしきれなかった質問もありました。そこで日経ビジネス編集部は、回答しきれなかった質問に関して天野氏に追加取材しました。顧客開拓と人脈作りの秘訣を聞いた1回目に続き、今回は「仕事ができる人」の共通点や提案型営業のこつなどについて聞きます。

(構成:尾越まり恵)

天野さんはキーエンスで20年近く働き、その後はご自身で会社も経営する中で、さまざまな優秀なビジネスパーソンに出会ってきたかと思います。前回に引き続き、こちらも視聴者の方からの天野さんへの質問です。「仕事ができる人の共通点は、何だと思いますか?」

天野眞也氏(以下、天野氏):すごくシンプルですが、僕は「時間割」に尽きると思います。仕事ができる人とできない人は、何かをなすためにちゃんと時間を使っているかどうかで分けられます。

 みんな営業が上手になりたいと言いますが、どれくらいの人が実際にロールプレイングをやっているのでしょうか。1日1時間練習すれば、1週間で5時間、月に20時間になります。そのような練習をしている人と、何もしていない人だったら、当然練習している人のほうが強いに決まっています。自分のやるべきことをしっかり時間割で管理して、予実(予定と実績)を見ている人が僕は仕事ができる人だと思います。

 「うちは新規開拓が苦手でさ~」と言う営業部長に、「新規開拓に、営業担当はどれくらい時間を使っているんですか?」と聞くと、そもそも管理していないことがほとんどです。「いやいや、管理できないでしょ」と言われたりします。

 そんな営業部長はダメです。そもそも予定が何時間で、実績が何時間なのか。足りなかった時間をさらに細かく分析して、何が原因で、それをリカバーするために、いつまでに何を何時間やるのか、と考えていく。その時間を見るだけでほとんどの問題が解決するのではないかと僕は思います。営業の9割は時間で語れます。

キーエンスで20年近く働いた経験を持つFAプロダクツの天野眞也会長
キーエンスで20年近く働いた経験を持つFAプロダクツの天野眞也会長

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